「ステイホーム」で倒れた時に一人だったら!?

 

一人暮らしであろうと家族やパートナーとの同居であろうと、倒れたその時に手を貸してくれる人がいなければ、自宅は危険な密室になります。
私のような心臓発作だけでなく、脳卒中や転倒など、いつどんなトラブルが襲ってくるか分かりません。

「倒れたのが、人目のある電車内だったのが幸いしましたね。自宅で倒れていたら、腐乱状態で発見されていたかもしれません」と私の主治医は振り返りますが、まさにその通り。

フリーライターで、基本は自宅で仕事。あの日、たまたま打ち合わせのアポが入っていなければ、死んでいたでしょう。
今年は、新型コロナウイルスの感染拡大で盛んに「ステイホーム」が叫ばれていますが、何の備えもない自宅は本当に恐ろしい環境なのです。

 


緊急度によって連絡先を決めておこう


① 一人で倒れたら迷わず119番。

② それでも迷ったら、迷う余裕があるなら「救急安心センター事業(♯7119)」
電話で専門家からアドバイスを受けることができます。

③ 消防庁提供している無料アプリ全国版救急受診アプリ「Q助」を活用
緊急度を判断し、救急車を呼ぶべきか医療機関を受診すべきかが分かります。
医療機関の検索、受診のためタクシー手配へのリンクもあります。

備えとして、私はスマホの緊急時情報(連絡先、住所、血液型、服用薬)を登録しています。これは、ロックのかかったスマホでも緊急通報の画面から誰でもダイレクトにアクセスできる機能です。


心疾患で倒れたら危険度が高い!


私のような心疾患の再発リスクは高いので、左脇に植込み型除細動器(ICD)という医療機器を入れています。
これは、簡単に言えばAEDの小型版で、心臓に異変が起きると自動的に作動する少し大きなお守りです。

「狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、肺塞栓症、大動脈解離では、心肺停止後の搬送で死亡率が高く、命を取り留めたとしても社会復帰できた方は1割にも満たないのです。リスク回避には一にも二にも生活習慣病の早期発見が有効。
とはいえ心筋梗塞や脳卒中といった血管が詰まる類いの病気は検診での発見が難しいので、たとえ症状がなくても血圧やコレステロール、血糖値を意識して管理すること!」という主治医からの忠告を肝に銘じています。


脳梗塞は早めの救急車がカギ

 

救急搬送で心疾患の次に多いのが脳卒中。脳血管が詰まる脳梗塞、血管が破れる脳出血、血管のコブが破裂するクモ膜下出血に大別されます。
心疾患に比べると、突然倒れても命を取り留める可能性は高いのですが、発症から治療を受けるまでの時間が予後を左右します。

私の場合は脳卒中ではありませんでしたが、心肺停止により一次的に脳に栄養や酸素が行きわたらない「低酸素脳症」を起こし、「高次脳機能障害」の診断を受けました。
記憶力や注意力が低下し、感情や行動のコントロールが難しくなるなど、さまざまな症状が現れたのです。
他にも手足の麻痺、言語障害、認知機能の低下といった後遺症を残すことが多く、介護の必要性が高いのも事実。

もしも下記のような症状を自覚したら、一分一秒を争いますので、即座に救急車を呼んでください。119番に連絡しても声が出せない場合でも、受話器を叩いてSOSを伝えましょう。

脳梗塞、脳出血
・半身のまひ、しびれ(手足のみ、顔のみの場合もある)
・ろれつが回らない、言葉が出ない
・立てない、歩けない、ふらふらする
・視野の半分が欠ける、ものが二重に見える

くも膜下出血
・バットでいきなり後ろから殴られたような頭痛

『山手線で心肺停止! アラフィフ医療ライターが伝える予兆から社会復帰までのすべて』
熊本美加・著 上野りゅうじん・漫画 鈴木健之・監修 1320円 講談社

毎年の健康診断では「問題なし」だったアラフィフの医療ライターが、ある朝、山手線で心肺停止に。予兆はなかったのか? その時、生死を分けたものとは? その後、高次脳機能障害となるもリハビリを経て仕事復帰するまでをまとめた「蘇りルポ」をコミック化。主治医の監修付きで実用書籍にしました。自分と大切な人のために、読んでおきたい一冊です。


文/熊本美加
構成/片岡千晶(編集部)
この記事は2020年12月27日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。


・第1回「山手線内で心肺停止!即死を免れた医療ライターが2週間前から感じた予兆とは?」>>

・第2回「電車内で心肺停止…脳の機能障害になった女性医療ライターの入院&治療ルポ」>>

・第3回「心肺停止、脳障害から蘇った医療ライター「倒れた後の入院&治療のリアル」」>>

・第4回「山手線内で心肺停止から蘇った医療ライター「留守番の猫は?退院後にした3つのこと」」>>

・第5回「心肺停止から蘇った医療ライター「仕事復帰までの道のり、退院後の生活で困ったこと」>>

 
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