涙の代表落ちから3年…樋口新葉選手の挑み続ける姿にもらい泣き_img0
2020 GPシリーズ NHK杯 女子FSで演技する樋口新葉選手。写真:長田洋平/アフロスポーツ

ドラマティックな滑りで人々に感動をもたらすフィギュアスケート。この競技の最大の魅力は選手の個性が全面に出たスケーティングにありますが、同時にその言葉にも選手それぞれの生き様が垣間見えます。そんなフィギュアスケーターの言葉にフィーチャーする本コラム。

第3回目に登場するのは、2018年世界選手権銀メダリスト・樋口新葉選手です。五輪出場という夢を追いかけ、難易度の高い大技に挑み続ける樋口選手。そのファイティングスピリットの根底には、3年前に自ら発信した決意表明がありました。

 

負けたときほど、その人らしさが見えてくる


何があっても明日は必ずやってくるし、諦めなかったらいつかいいことあるって信じてこの先どんなに辛いことがあっても今日のことがあったから頑張れるって思えるようにこれから倍返しの始まりだ。大変だ、だけど四年もかけてじっくりじっくり煮込むからきっと美味しくなるね。(出典:本人ツイッター(@wakawakaskate))

4年に一度。選手にとって、人生を懸けた特別な地・オリンピック。その代表枠を争う全日本選手権は、毎回、嬉し涙と悔し涙が交錯する、残酷なほどドラマティックな舞台です。平昌五輪の代表最終選考会を兼ねた2017年の全日本選手権もまた忘れられない試合となりました。

怪我から復活を遂げた日本のエース・宮原知子選手。急成長を遂げる坂本花織選手。可憐な滑りの三原舞依選手。宮原選手とともに日本女子を支えた本郷理華選手。そして、同年のグランプリファイナルへの出場を果たした樋口新葉選手が、主な代表候補でした。

火花散る熱戦の末、優勝した宮原選手が代表に内定。残り1枠は、全日本で2位に入った坂本選手と、シーズンを通して好成績を記録した樋口選手のふたりで争うことに。そして最終的に代表の座を掴んだのは、日の出の勢いで躍進し続ける坂本選手の方でした。

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2017 フィギュア全日本選手権 女子FSでの演技。写真:YUTAKA/アフロスポーツ

この年の樋口選手はショートプログラムに『ジプシーダンス』、フリースケーティングに『007 スカイフォール』と、どちらも樋口選手の個性にぴたりと合ったプログラムを用意し、ジャッジの評価も上々。ロステレコム杯で3位、中国杯で2位と連続して表彰台に立っただけでなく、その時点でのシーズンベストは217.63と、世界3位。のちに五輪メダリストとなるメドベージェワ選手、ザギトワ選手に次ぐ高得点を叩き出していました。

代表争いを一歩リードしていた中での大失速。その悔しさは、当時まだ16歳だった少女の胸に大きな傷を残したであろうことは想像に難くありません。実際、代表を逃した直後のインタビューで樋口選手は涙をこらえきれませんでした。

多くのファンが彼女の失意に胸を痛める中、その日の未明、自らTwitterで発信したのが冒頭の言葉です。あのとき、誰よりも早く次の4年に目を向けたのが、最も近い位置で五輪を逃した樋口選手でした。

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2020 ジャパンオープン 公式練習にて。写真:長田洋平/アフロスポーツ


試合の様子やインタビューの映像を見る限り、樋口選手は非常に喜怒哀楽がはっきりしているタイプです。楽しいときはケラケラと笑い、悔しいときは人目もはばからず涙する。その感情表現の豊かさがあのエモーショナルな演技を生んでいる反面、時にライバルたちに競争心をむき出しにし、試合の結果に対して露骨に顔に出す性格が、バッシングの対象になることもありました。

もちろん人の好みはそれぞれ。その上で個人の意見を言わせてもらうならば、私は樋口選手くらい気持ちのわかりやすい選手がいてもいいと思います。勝ちたい気持ちが前面に出るのは、アスリートとして当然のこと。思わずしかめっ面になったり、涙が隠しきれない感受性の豊かさも、フィギュアスケートという芸術性を問われる競技に挑む選手であれば、プラスになることもたくさんあるはず。全員が全員、優等生になんてならなくていい。メディアにキャッチーに切り取られた〝倍返しの始まりだ〟というフレーズも、いかにも勝気な樋口選手らしくて、むしろもっと応援したくなったくらいです。

泣いたり笑ったり…樋口新葉選手の感情を爆発させる姿に共感
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