大人がメイクで「生き生きした肌」をつくる方法【水野未和子×松本千登世】
水野未和子さんが提案するディファインメイクとは、コンプレックスやエイジングをカバーするためでなく、誰かのようにカモフラージュするためでもない、自分自身の延長線上にある唯一無二の美しさを「ディファイン」する(明確に際立たせる)ためのもの。その真髄が綴られた水野さん初の著書『ディファインメイクで自分の顔を好きになる~“私だけの魅力”が絶対見つかる自己肯定メソッド』(講談社刊)は、「自分の顔を好きになれた」「心が軽くなった」などの声が寄せられ、いわゆるメイク本を超える反響を呼んでいます。なぜ、ディファインメイクは私たちの心を捉えるのか……? 今回、この本の企画・取材を担当した私が、改めてディファインメイクを体験、その秘密をレポートします。
松本:じつは、私が「未和子(水野さん)の本を創りたい』と思ったのには、理由がありました。未和子のメイクだと、女優やモデルの女性たちがいつもと違う顔をしているように見える。圧倒的に美しい彼女たちの奥に、意志の強さだったり、人間らしさだったり、その人の顔や表情に、より奥行きが増す気がする。このメイクの真似ができたらいいのに……! ずっと、そう思っていたから。
水野さん:それまでファッションページのメイクを担当することが多かったから、ハウトゥやメソッドについて聞かれることに、あまり慣れていなかったんですよね。千登世さん曰く、私は質問を受けるたび、どうやら「ディファイン」という言葉を何度も繰り返していて……。私にとっては当たり前のことだったから気づかなかったのだけれど、それが「ユニーク」と言われて、当初は「そう?」「本当?」と、正直、不思議な気持ちでした。
松本:そうそう、未和子はことあるごとに、「ディファイン」って言うのよね。輪郭や凹凸をディファインする、陰影や血色でディファインする……。片や、美容のページに関わることが多い私は、知らず知らずのうちに、コンプレックスやエイジングを隠したりごまかしたりして、色や質感、形を「理想に近づける」のが、メイクの役割と思い込んでいる部分があった。だから、未和子に話を聞くたび、その思い込みがほどけていくのを感じていました。そして、メイクについて話しているはずが、なぜか「女性像」や「人間像」みたいな方向に広がって……、ぐんぐん引き込まれました。
水野さん:基本的に、私にとってのメイクは「その人、ありき」。もちろんテーマによって、最先端トレンドの顔を表現したり、ファッションに合わせたメイクを提案したりということもあって、それはそれで楽しいけれど、私が何より嬉しいと感じるのは、メイクをしたその人が生き生きと輝くのを見たとき。女優やモデルの女性たちが「この顔、好き」と言ってくれると、幸せになれるんです。
松本:まさに! 私は何度か、未和子にメイクをしてもらったことがあるのだけれど、そのたび「自分の顔、結構好きかも」って思える。今回も、すごく、すごく楽しみです!
水野さんの「ディファインメイク」の考え方
1 「完璧」なスタイルは目指さない
松本:今日は、未和子にメイクをしてもらえるので、高揚感と安心感との両方があって、自分らしくいられる服を選びました。もともと黒が好きだったり、パンツが好きだったり。マスキュリンな要素が「7割」の辛口スタイルが多いかな? 自分の中でそのバランスが崩れると、途端に「男装?」「女装?」みたいになる(笑)。美容に携っているにもかかわらず、自分のメイクにはとても迷います。
水野さん:千登世さんは好きなスタイルがはっきりとしていますよね。服選びに性格や生き方が表れている感じがします。このコーディネイトに、ヘアスタイリストのFUJIWARAさん提案のセンターパートでタイトにまとめたミニマムなヘアスタイル。私は、まったく欠点が見えない「完璧」を目指すのでなく、あえて、肌を「汚して」「濡らして」「温める」を強調したメイクをしたいなあ、って。いかにも「メイクをしました」感を和らげて、仮面や人形のようにのっぺりとした仕上がりにならないようにしたいと思います。
松本:汚す! 濡らす! そして、温める! 取材をしたときにも、その表現にはっとさせられました。通常、メイクの説明でこれらの言葉は、あまり使わないから。
水野さん:私にとっては、メイクをその人の一部にするために、欠かせないステップなの。メイクの仕上げにシェイディングブラシに残ったシェイディングパウダーをラフに纏わせると、肌色に立体感が生まれるし、フェイシャルミストをしゅっと吹きかけて濡らすとメイク全体がなじむ……、すると、肌が温まる=メイクをしたてよりも少し時間が経ったような、ほどよい温度感や適度なこなれ感が生まれるんです。きらきらと輝いて日常を生きている、「生き生き感」を表現したい。
2 その人らしい、生き生きとした肌をつくる
松本:うわあ、このメイク、大好き! 色は感じさせないのに、どこか温度や湿度といった人間的な温もりを感じさせる、格好いいメイク。嬉しいです。
水野さん:どこかネイティブ・アメリカンのような、力強い存在感を意識しました。まず、下地。カネボウ パフォーミング ドロップ ラディアントブラック(*1) を使いました。これは、ファンデーションを塗る前に、顔全体をディファインしちゃおう! みたいな、ユニークな化粧下地。手に取ると「えっ!?」と思う色(ブラック)ですが、シアーなので、なじませるだけで仕上がりにエッジが出て、顔印象が締まります。そして、肌に溶け込むようになじむファンデーション、カネボウ フュージョンフィット ウェア オークルD(*2)を薄く薄く。そして、ほんのり日焼けしたような肌色を演出するために、血色と影色を兼ねたような、赤みのあるベージュブラウンでチークとシェイディングを入れました。
松本:未和子ならではの職人技によって、肌の奥に埋もれていた骨格や凹凸がぐっと浮き出てきた感じで。思い込みから解き放たれて、「私の肌、結構いいかもしれない」と自信が持てる。未和子がよく言う「つくり過ぎない」「完璧にしない」は、こういうことなんだと腑に落ちました。
水野さん:その人らしい服があるように、その人らしい肌がある。答えはひとつじゃない。そう思えたら、素敵ですよね。
*1
血色感と質感を自由に表現できる化粧下地。ラディアントブラックは、透け感のある黒で肌が潤いを湛えたような艶を与え、引き締まった印象に。「ファンデーションと混ぜて使ったり、あとで足したりすることもできて、自由自在に陰影をコントロールできる」(水野さん)。カネボウ パフォーミング ドロップ ラディアントブラック 25ml ¥3000/カネボウ化粧品
*2
肌に溶け込むような軽やかでみずみずしいテクスチャーが、のばした瞬間に密着して肌と一体化。「生き生きとした美しい肌を着る」ように、肌そのものの美しさを演出。透明感と血色感が溢れる自然なツヤ肌へ。SPF27・PA++(OCA:SPF18・PA++/OCD:SPF26・PA+++/OCE:SPF21・PA+++)KANEBO フュージョンフィット ウェア 全8色 各30ml ¥6000/カネボウ化粧品
取材時に描かれた、水野さんのスケッチ。光、影、血色のディファインは、思いのほかシンプルで、真似しやすい。
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