やってはいけないこと
③性の話題を「笑い」にして避ける

 

ちなみに太田さんは、いわゆる「性教育」についても、小さいときから息子さんと話す機会を作っていたそうです。

太田さん:絵本は保育園の頃から読んでいました。あとは、子供向けの性教育の本を買ってきて「面白いよ」と伝えて、長男は小学校4年生くらいから読んでいたと思います。今小3の二男も最近読み始めてます。おすすめの本は『マンガでわかる男の子の性』(染矢明日香著、村瀬幸浩監修/合同出版)と『おうち性教育始めます』(フクチマミ・村瀬幸浩著/KADOKAWA)。本を読みながら、「生理はだいたい何歳くらいで始まるか?」「知ってるよ、10歳から15歳くらい」「正解~!」なんてクイズをやってみたり。わりとあけっぴろげで素直な子なので、「教えて」と質問してくることも。「マスターベーションって何?」とか「性感染症ってなに?」とか。笑ってしまったのが「体外受精って有るなら、体内受精っていうのもあるの?」。「それは普通にセックスで妊娠することなので、ふつうは敢えて体内受精とはいいません」と答えたら「なるほどねー!」って(笑)。

「思春期になったら……と先延ばしにしてしまうと、ハードルはずっと高くなる」と太田さん。大学生の息子さんがいるお母さんからは「もっと早く話しておくべきだった」と伺ったことも。幼い頃であれば子供には性に対する妙な偏見がなく、だから親のほうもも恥ずかしがらずに「科学的知識」として教えやすいと思います。そして最も大切なのは、子どもが思春期になるまでに、性について子どもと話せる関係を築くことができることです。
太田さんが息子たちに勧めようと、性教育に関する本を用意したのは、長男が小学3、4年生の頃。幼いうちからきちんと性について学ぶ機会を作ろうと思ったのは、なるべく、卑猥なイメージをもつ前の年齢のうちに、、きちんとした科学的知識として身につくと考えたから。ただし、そうした弊害に通じる要素は、性教育とは無関係にも思える日常の中にもあるものです。

太田さん:うちの息子たちはふざけたがる性格でもあり、多分結構他の男の子もやってそうだと思うんですが、家の中でパンツを脱ぎちんちんを出して笑いをとろうとする、みたいなことをするんです。子どもが家のなかですることにそんなにぴりぴりしなくても、という考え方もあるかもしれないし、実際笑っちゃう気持ちになったりもするのですが、でも、「性器を露出することを冗談にして笑いをとる」ということを肯定すべきじゃないと思うので、そういうことが冗談になるということ自体を否定する対応をします。真面目な顔と口調で「何やってるの?面白くないし、そういうことで笑いをとろうとしないで。プライベートゾーンっていう言葉知ってたよね?」と白けさせる。ニヤニヤする空気は絶対に作りません。それは、こうした行為を笑いする発想が、プライベートゾーンを尊重する感覚とは遠いと思うからです。自分のプライベートゾーンだったら大事にしなくていいというわけではないし、他人のプライベートゾーンを尊重しない感覚は、「笑い」の形をとった性的嫌がらせの根底にあると思いますので。
 

「性」を冗談にしてはぐらかすのは大人たちもやってしまいがちなこと。面白くないと態度で示し、白けさせるのはセクハラにも有効な手段ですね。

 



太田啓子さんへのインタビュー【新時代のジェンダー教育】は、後編に続きます。(2月10日公開予定)

 

<書籍紹介>
『これからの男の子たちへ :「男らしさ」から自由になるためのレッスン』

太田啓子(著) ¥1760(税込)

君が将来、幸せになれるように―― 
男の子にこそきちんと話そう、性のこと。

「男らしさ」の呪縛は何歳から始まる? 
わが子をセクハラ加害者にしないためには? 
性差別社会に怒りを燃やしつつ、男子2人を育てる弁護士ママが悩みながら考えた、ジェンダー平等時代の子育て論。

対談=小島慶子(タレント・エッセイスト)、清田隆之(桃山商事代表)、星野俊樹(小学校教師)
 

取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)
(この記事は2021年2月8日に掲載されたものです)

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