先行きが不透明なコロナ禍において、“自分を見つめ直すための一冊”として再び脚光を浴びているのが『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0』です。2020年9月に累計部数100万部を突破しミリオンセラーとなっている本書は、人の悪いところではなく、強みを伸ばすことに特化した〈ストレングス・ファインダー〉という自己分析法について解説する一冊。世界で2400万人以上の才能を開花させてきたというストレングス・ファインダーは、一体どのようなものなのでしょうか? 今回は、本書の翻訳を手掛け、ストレングスを使ったコーチングの講師としても活躍する古屋博子さんに、インタビューでお話しを伺います!

自分の強みを見える化!世界で2400万人の人生を変えた「才能」発掘法とは_img0
 

古屋博子さん:『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0』(日経BP)翻訳者。ギャラップ認定ストレングスコーチ。ギャラップのストレングス・コーチング・コースやハイパフォーマンス・マネジメント・コースのリーダーおよび講師も務める。慶應大学大学院で修士号(政治学)を、東京大学大学院で博士号(学術)を取得。2児の母。

 


〈ストレングス・ファインダー〉とは、私たちに一体どんな影響を与えてくれるものなのか。まずはそれを知るために、古屋さんがある女性の事例を教えてくれました。

「ある企業でマネージャーを務めていた女性の話です。ここではAさんとしましょう。Aさんは部下に対して、“なぜ誰かに聞かないの!?”が口ぐせだったそう。わからないことや困っていることがあったら、すぐに周囲の人に聞いて解決するのがAさんの流儀。だから、部下にも同じやり方を要求していたんです。でも、部下はそれができなくて、Aさんは常にイライラしていたと言います。ストレングス・ファインダーを行った結果、Aさんはあいまいな事柄を具体的に言語化するのが得意な“コミュニケーション”という【資質】が高いことがわかりました。困った時に臆せず人に聞ける・話せるというのは、Aさんだからこそ成せる業だったわけです。それからは“なぜ聞かないの!?”を封印。部下の立場に立って“一緒に考える”ことに、コミュニケーションという強みを活かすようにしたそうです」

ストレングス・ファインダーはアメリカのギャラップ社が開発した自己分析ツールで、177の質問に答えることで自分の強みを発見できるというもの。Aさんのような、職場でのコミュニケーション改善はもちろん、仕事や人生の幸福度を高めることから、古屋さんは“才能測定ツール”とも呼んでいます。才能、というと「選ばれし者しか持ち得ないレアな能力では?」と少し斜に構えてしまいがちですが、ストレングス・ファインダーが定義する“才能”は、少し意味合いが違うといいます。

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「その人が自然に繰り返している思考や感情、そして行動パターンのうち、“生産的で良い結果を生み出すことに使えるもの”のことを【才能】と定義しています。くだものの“ぶどう”で例えると、ぶどうの一粒一粒が【才能】で、その才能という粒が集まったものが【資質】という房を作っているイメージです。“私には才能なんてない!”と言う方がいますが、絶対にそんなことはありません。一人ひとりのぶどうの木には、この才能の粒が集まった【資質】という房がたくさん実っているんです。ストレングス・ファインダーは、自分がどんな才能や資質を持っているのか、さらにその順番や活かし方を発見するためのツールなのです」

ストレングス・ファインダーでわかる34の【資質】
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約200万件のデータを統計的・理論的にまとめ、4つのグループに区分された34の【資質】。本を購入するとストレングス・ファインダーへのアクセスコードが取得でき、自分の強みトップ5の資質を知ることができる。例えば筆者は、「達成欲」「内省」「最上志向」「着想」「戦略性」という結果に。ギャラップ社のウェブから直接購入すれば、34資質すべての順位を知ることも可能。


強みを見つけることは、ぶれない軸と自信を持つということ。だから、たとえ転んでも立ち上がりが早いんです」と古屋さん。新型コロナ禍で転職活動がうまくいかず弱々しい声で話していたひとりの女性が、自分の強みを自覚したことで“この方、実はキャリアウーマンだったんだ!”という堂々たる話ぶりになり、驚いたこともあるそう。「その後、再就職が決まったとおっしゃっていて私も嬉しかったですね」と古屋さんは笑顔で話します。

「これまでは、学校教育も企業の人材教育も、ダメなところを見つけて矯正していくことがほとんどでした。ダメなところをカバーするのも大切ですが、今の時代は良いところを見つけて伸ばす教育も必要ではないでしょうか。ギャラップのデータでは、得意なことをする時間が1日3時間未満の場合、52%の人がストレスを感じると答えましたが、得意なことをする時間が1日10時間超の場合、ストレスを感じると答えた人は36%にまで減りました。つまり、得意なことをすればするほどストレスや不安が減り、ポジティブな感情が高まることがわかっているんです。自分でコントロールできない状況が続いている今だからこそ、“立ち上がり力”をサポートするストレングス・ファインダーで、多くの方に自分の得意なことや良いところを発見していただけたらいいなと思っています」