責任とやりがい。働くことってほんとうに楽しい。


化粧品メーカーで契約社員として働き始めたのは、同期入社で20 代の男性社員と所長とわたし。たった3人の、スタート間もない営業所でした。

わたしが売ることになったのは、まったく無名のスキンケア商品。販路になるのは、チェーン展開しているドラッグストア。さらには百貨店の薬品フロアやバラエティショップの一角で、棚一段を使った売場を展開すること。

主な取引先になるドラッグストアへは、とにかく靴底やヒールがあっという間にすり減るほど、通いつめました。先行のブランドの商品が並んでいる棚に、うちの商品を置いてもらうにはどうしたらいいか。まずは取引先の化粧品担当や店長に商品サンプルを手渡し、商品の特長を伝えていきました。

営業所には女性はわたしだけという少ない人数だったので、肌診断やマネキン、クレーム処理など、なんでもこなしました。

そうこうしているうちに、わたしたちの営業所の成績が上がり、本社の人事担当から、「正社員にならないか」と誘われました。会社の慣例では、本人が申請して、適性検査をクリアしてから正社員に登用されるところ、会社のほうから打診されたのはうれしかった。 「会社はちゃんとわたしの働きを見ていてくれたんだ」と、これまでの苦労が報われたようで胸が熱くなりました。正社員になれば、ボーナスも実績で支給され、さまざまな手当てや退職金も出ます。年金などにも有利でしょう。もちろん、快諾しました。

正社員で勤務した会社は57歳で早期退職、その後はパート勤務で仕事を続けているショコラさん。65歳になったばかりの今は、自分の体力とも相談して週4日勤務に。

わたしの仕事人生のなかでも、いちばん充実していたのは、この40代後半から50代前半にかけてだったと思います。朝早くから夜遅くまで惜しみなく働いたものです。自分でも、なぜあんなにも頑張れたのか、と思い返しますが、食べていくためには「なにがあっても辞められない」というがむしゃらさがあったから、営業という仕事がつづけられたのでしょう。

 

もうひとつ、とても大きかったことは、わたしが自社の商品を心から素晴らしいと思っていたこと。近所の友だちに、「どんなにつらくても化粧品はいいよね、商品を愛せるから。肌の弱いたくさんの人の助けになれると思うとがんばれるよね」と励まされたこともありました。

平日はずっと取引先をまわり、土、日曜は自宅のパソコンで資料をまとめる日々。休みなく働いていて、きっとつらいことはたくさんあったと思うんですが、いまは充実していた日々が懐かしく思えます。