約1万6000人が亡くなった、東日本大震災から10年。観測史上最大規模の地震でした。巨大な海洋プレートがはじけ、大きな津波が太平洋沿岸部を襲いました。千年に一度の災害と言われています。日本は災害のとても多い国です。この国に暮らす限り、誰しもが災害から逃れられません。むしろ「いま生きていることの方が奇跡」なのかもしれません。
10年という節目を迎え、漫画、津波で娘を亡くした教師の手記、豊富なインタビューと解説で構成された『きみは「3.11」をしっていますか? 東日本大震災から10年後の物語』(漫画/細野不ニ彦 ノンフィクション/平塚真一郎 解説/井出明 特別協力/河北新報社 2021年2月 小学館刊)が出版されました。
本書から、巨大津波が押し寄せたにもかかわらず奇跡的に2階部分が流されず、近隣住民の避難場所そして復興の象徴となった石ノ森萬画館のドキュメンタリーと、生存した地元被災者の方の「10年後の物語」の一部を紹介します。
“臨時避難所”石ノ森萬画館の5日間
宮城県石巻市を流れる旧北上川河口近くの中州にある石ノ森萬画館は、数々のヒーローを生んだ漫画家・石ノ森章太郎の記念館として建てられました。2011年3月11日午後2時46分に東日本大震災が発生。まもなく、石巻市に大津波警報が発令されました。
地震発生から約1時間後、津波は旧北上川を遡上。萬画館は一気に津波にのみこまれてしまいました。がれきの山が押し寄せたものの、なぜかどれも萬画館の手前でそれて衝突しませんでした。建物の河口側が斜面に作られていたので、津波のコースが二股にそれたからではないか、と萬画館の大森盛太郎業務課長は推測しています。
避難してきた人々、津波に流されてきた人々、近所の人、家族連れ、子どもから高齢者まで、計38人の被災者(+子犬1匹)が萬画館に避難しました。浸水をまのがれた3階図書室で救助を待つ間、貯蔵された食べ物・飲み物で命をつなぎ、石ノ森ヒーローが活躍する漫画本を読んで過ごしました。
3日目には水が引き、自力でがれきを超えられる人は避難所や実家へ。5日目に自衛隊が到着し、ようやく避難していた全員が萬画館を去り”臨時避難所“石ノ森萬画館の使命を終了したのでした。
人々を救った萬画館でしたが、大きな被害を受けていました。萬画館の木村仁統括部長は、3月31日にスタッフ全員を泣く泣く解雇。それでもスタッフたちは萬画館に集まり、土砂やがれきなどを片付けました。
スタッフや関係者の努力が実り、2012年11月17日に萬画館は再開のセレモニーが行われました。翌年2月から休館し、館内の展示などをリニューアルし、3月23日に再オープン。萬画館は完全に復活し、復興のシンボルとなったのです。
【漫画】石ノ森萬画館の被災者を支えた5日間
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