「野球選手の妻って本当に大変なんだなって、母を見ていて思いました」
そう語るのは、アーティスト&タレントのMattさん。大胆なメイクと美容へのこだわり、天真爛漫なトークで注目を集め、唯一無二の個性で人気を博しています。父は言わずと知れた、日本屈指の名投手だった桑田真澄さん。そんなMattさんが苦労をねぎらうのは、自身の母である桑田真紀さんです。“野球選手の妻と息子”の関係性、そして現在のMattさんが生まれた秘密について、インタビューでお聞きします。 

 

Matt
1994年、東京都生まれ。小学生の時に野球チームに所属。中学生で吹奏楽部に入部し、音楽活動に没頭する。堀越学園に楽器推薦で進学をして吹奏楽団に入団し、アルトサックスとソプラノサックスを担当。3年生の時には団長を務め、『東京都高等学校吹奏楽コンクール』にて金賞を受賞。大学は楽器推薦で桜美林大学芸術文化学群音楽専修に進学し、サックス・ピアノ・ドラム・作曲を学ぶ。大学生の時にブライダルモデルをスタート。アメリカ留学も経験。卒業後はタレントとして活動し、現在は歌手・作詞作曲・タレント・モデル・レタッチャーメイクアップ・ブライダルタキシード&和装デザイナーなど様々な分野でアーティストとして活動。コロナ禍の2020年9月には、無償の愛を歌った楽曲『Unconditional Love』をリリース。

 


野球好きになれなかったMatt少年
自由の羽を折らなかった桑田家


「父が桑田真澄だということは友だちにも話していませんでした。野球選手の息子という悩みも、子どもながらに周囲には理解されないだろうと考えていて。母はそんな息子たちの感情も汲み取ってあげなきゃいけないから、子育てにはとても苦労したはずです。でも、僕も母も繊細な悩みを外で打ち明けることができなかったぶん、お互いの気持ちを正直にぶつけあうことができたんだとも思います」

どんな不安や悩みも親子で向き合い、とことん話し合うのが母・真紀さんの流儀。子育て中の心情や子どもたちへの思いを記した真紀さんの著書『あなたはあなたのままでいい 子どもの自己肯定感を育む桑田家の子育て』には、「長男は夫と野球という共通の話題がありましたが、Mattにはそれがなかったので、意識的に、時間をかけてよく話をしてきました」と、当時の記憶が綴られています。

「小学校1年生のとき、野球をやらなくちゃいけないかなというムードがあって野球チームに入りました。でも、ヘッドスライディングして泥だらけになるのも、“バッチコーイ!”って声を出すのも、当時の僕にとっては謎で(笑)。小さい頃から好奇心旺盛で好きなことには貪欲だったけれど、“野球”はどうしても夢中になれない存在でした」

複雑な感情を抱きながらも、小学生の6年間はなんとか野球をやり抜いたMattさん。しかし、最終的には中学生になったのを機に野球を辞めることを決断。心のバランスを崩しそうになったときになんとか持ちこたえられたのは、野球と同時に「好きな音楽をやらせてもらえていたから」と語ります。

 

「家の中の会話はとにかく野球の話が中心でした。それでも、両親は僕が音楽をやりたいと言ったらバイオリン教室に通わせてくれたし、楽器を買ってくれたりした。今考えればいろんな選択肢を与えてもらえていたんだなって。僕が感じていた野球選手の息子というプレッシャー以上に、“桑田真澄の息子が野球を辞める”という一大事を許してくれた両親には感謝しかないですし、その寛大さを尊敬もしています。子どもの考えを尊重してくれる両親の元に生まれてよかったって、今では心の底から思っているんです」

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