心に深い傷を残す、親に虐げられた記憶――。大人になってなお、そのトラウマに苦しむ人は少なくないといいます。福祉施設などで自尊感情回復のための心理療法を行い、トラウマに苦しむ当事者の支援をしている藤木美奈子さんも、親からの虐待を経験したひとり。そんな藤木さんの著書『親の支配 脱出マニュアル 心を傷つける家族から自由になるための本』では、傷を抱えたまま生きる大人たちが、いかにして心の後遺症を克服していけばいいのか、その具体的な方法を教えてくれます。
自立して親元を離れることで一時は縁が切れたと思っても、当然ながら親も歳を取るもの。親の“介護”が視野に入ってきたという大人世代も多いことでしょう。しかし、親から虐げられてきた“子”は、高齢になった“毒親”とどう向き合ったらいいのでしょうか。今回は本書から特別に、2度と自分を犠牲にしないための“親”の考え方について、一部を抜粋してご紹介します。
昨今、「毒親」「機能不全家族」という言葉をよく耳にします。子どもの心身を傷つけ、健全な成長を阻害する親や家庭環境がそのように呼ばれるようです。
ここであらためて、「子どもを傷つける親」とは、どんな親か、よくあるタイプを下の画像に掲げました。多種多様に見えますが、これらの親には共通した特徴があります。それは、「子どもの気持ちを大切にしない」という点です。
自分の気持ちを大切にされなかったーーそのような思いを持って育った子は、例外なく「生きづらさ」を抱えて生きることになります。人間関係がうまくいかず、転退職をくり返したり、結婚生活や子育ても悩み多きものとなります。
なかにはうつ病やパニック障害などの精神疾患を患ったり、酒、薬物、ギャンブル、過食や自傷行為などに救いを求める人もいます。
なぜ、そんなことをしてしまうのでしょう? その根底に「親に自分の『存在価値』を認めてもらえなかった」という悲しい原体験があるからです。
その体験の記憶から生じるのは、「自己無価値感」、すなわち「自分を価値ある存在と認められない感覚」です。その感覚が不安や苦しさなど「負の感情」を生み出し(下画像参照)、いつまでもその人を苦しめ続けるのです。
これが「傷つける親」によって負わされた後遺症のパターンと言えます。私はこれを「育ちの傷」と呼んでいます。
「育ちの傷」を抱えた人は、〈この苦しさから抜け出す方法などこの世に存在しない〉と思い込んで無気力になったり、引きこもったり、あるいは睡眠薬や向精神薬などに偽りの救いを求めたりして社会から離脱し、医療や福祉の保護下で生きることを選択してしまう場合があります。
しかし、それらはいずれも一時的な逃避にすぎず、かえって身をほろぼしかねません。もっと根本的に親との関係を考え直し、トラウマからの回復を図る必要があります。
「子どもを傷つける親の特徴」と、「“育ちの傷”から生じる負の感情」
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