窮屈なコルセットや長いペチコートがあたりまえだった時代に、活動的な女性用ズボン、すその短いドレスやスカートを考案したココ・シャネル。 彼女は数々の斬新なアイテムを生み出し、女性の服と生き方に変化をもたらしました。
孤児院で育った少女が、ファッション界の革命児となるまでに、いったいどのようなドラマがあったのでしょう? 『世界のすごい女子伝記 ~未来への扉をひらいた、歴史にのこる50人』 にも登場する、ファッションの変革者、ココ・シャネルの偉業をご紹介します。
孤児院育ちのお針子、パリへ行く!
ガブリエル・ボヌール・シャネルは、1883年にフランスで生まれました。幼い時に貧困の中で母親をなくしたガブリエルは、寒村オーバジーヌの修道院にある孤児院へと預けられます。
修道女たちから裁縫やアイロンがけなどを習ったのち、18歳で田舎町ムーランの寄宿舎へと移ったシャネル。ムーランではお針子仕事のかたわら、騎兵将校たちが集まるキャバレーで歌手として舞台にたち、人気者になりました。「ココ」というニックネームは、この時代にもらったものです。しかし人気歌手でいられたのは田舎町だけでした。都会に出た彼女は、歌の仕事では大成できないと気づかされます。
その一方、ムーラン時代に出会った元騎兵将校の恋人が繊維業者の富豪だったため、シャネルは上流階級の人々と交わるようになりました。
彼女は、働く必要のない「豊かな生活」の中でも生きがいを求めます。周囲の女性たちのために帽子作りをはじめたのです。そして、恋人からお金を借り、パリで最もファッショナブルな地区、カンボン通り21番地に「シャネル・モード」をオープンしました。
当時の主流だった華美で装飾過多な帽子とは正反対の、シンプルでコンパクト、実用的でお洒落な帽子は、新しいモードとしてたちまち評判を呼びました。1913年には、上流階級が集まるリゾート地ドーヴィルにブティックを開業。シャネルが作り出す、活動的な女性のためのレジャーやスポーツに適した服は、人々から熱狂的な支持を得たのでした。
シャネルの「すごい」ファッション革命
その1・喪服の色を優雅で実用的なドレスへ
「リトル・ブラック・ドレス(LBD)」は、どんなときも女性を優雅で美しく見せてくれる存在です。
このアイテムがファッション界に登場するまで、黒いドレスは死者への哀悼を表すもの、すなわち喪服とされてきました。しかしシャネルは既成概念に囚われることなく、タブーであった「黒」の可能性を見出します。
彼女が作ったシンプルな黒いワンピースは、パーティに、観劇に、シーンを選ばず女性たちから愛されるようになりました。シャネルは「リトル・ブラック・ドレス」がどれほどシックで実用的になるのかを、ファッション界で証明してみせたのです。
その2・男性の下着素材「ジャージー」を高級ファッションに!
ジャージー素材をはじめて女性服に取り入れたのも、ココ・シャネルです。
伸縮性があって着心地の良い「ジャージー」。今では定番の素材ですが、当時は男性の、それも下着用の布でした。しかしシャネルは、活動的な女性のファッションとして、ジャージーを大胆に取り入れます。
シャネル考案の動きやすいドレスは、窮屈な服にとらわれていた女性たちへ大きな自由を与えました。
その3・女性の両手を解放した、革命的なバッグ
世界中の女性があこがれるアイコンバッグ「2.55」。
ハンドバッグやクラッチバッグが主流だった1920年代、シャネルは女性の両手を開放すべく、軍用の肩かけ鞄をヒントに「肩紐つきの女性用バッグ」を考案します。
第二次世界大戦後、シャネルはこのバッグをさらに改良。それこそが、チェーンストラップのショルダーバッグ「2.55」です。(1955年2月に発売されたことがネーミングの由来)
ふたを開けるとあらわれる裏地のカラーは、幼少期を過ごした孤児院の制服の色。シャネルを代表するこの伝説的なバッグには、彼女のこだわりと思い出が詰まっているのです。
その4・ツイードスーツに込められた美学
シャネルのシグネチャーアイテムといえば、なんといってもツイード製のスーツでしょう。どんな時も美しく、着心地よく、動きやすく。シャネルの美学と創意工夫が込められたツイードスーツは、女性をエンパワメントしてくれる、エレガントで力強い存在です。
それまで男性のものとされてきたスーツを、世界で初めて「女性のワードローブ」に仕立てたシャネル。彼女の考案したスーツは、ドレスコードを打ち破り、女性たちの自由と自立を後押しした究極の名品なのです。
その5・バイカラーパンプスのヒミツ
シャネルのシューズとして代表的な、つま先が黒いバイカラーデザインのパンプス。
シャネルのバイカラーパンプスは、上流階級の男性たちが愛用していたダービーやオックスフォードシューズから着想を得たものです。
つま先が小さく、脚をキレイに見せるだけでなく、先端の傷みを目立たせない効果もあります。美しく実用的なシューズは、昔も今も女性の頼もしい味方です。
世界を動かしたファッション
第二次世界大戦が始まると、シャネルは全ての店を閉め、表舞台から姿を消してしまいます。誰もが、シャネルの時代は終わったと思いました。
しかしそれから15年ほど経て、70歳になったシャネルは「退屈で死にそうよ」と、再びパリに戻ってきます。彼女はまた、ファッション界のリーダーとなったのです。
古い常識にとらわれず、粋で着心地の良いファッションを追求しつづけたシャネルは、1971年1月10日に息を引き取りました。
2021年の1月10日には、没後50年を迎えます。
シャネルがこの世を去って半世紀がたった今、女性たちはより自由な生き方を模索し、活動的なファッションを楽しめるようになりました。
心と体を閉じ込めてきた服から女性を解放したことで、シャネルはファッション界のみならず、世界の在り様を永遠に変えたのです。
世界のすごい女子伝記
そんな彼女の人生を、2ページに凝縮し読みやすくまとめているのが、冒頭で紹介した伝記絵本『世界のすごい女子伝記 ~未来への扉をひらいた、歴史にのこる50人』です。懸命に生きた女性たちのストーリーは、大人にも発見があり、子どもたちにも読み聞かせたい内容。女性であることに勇気がでてくる一冊です。
試し読みをぜひチェック!
▼横にスワイプしてください▼ ※実際の本は左開きです
『世界のすごい女子伝記 未来への扉をひらいた、歴史にのこる50人』
キャスリン・ハリガン :文 サラ・ウォルシュ:絵 ふしみみさを:訳
「あなたの未来のために読んでほしい一冊」
世界で19カ国語に翻訳されているベストセラー! ジャンヌ・ダルクからマララ・ユスフザイまで、時代を越えて人々に勇気と希望をもたらす女性たち50人の新しい伝記絵本。一人1見開き展開のオールカラーページで、心に残るお話が気鋭の英国人イラストレーターによる美しい挿絵で彩られ、楽しく読み進められる一冊。贈り物にも最適です。
●エリザベス1世/ジャンヌ・ダルク/インディラ・ガンディー/テレサ・カチェンダモト/武則天/ハリエット・タブマン/ボウディッカ/ハトシェプスト/イサベル1世/サカジャウィア
●フリーダ・カーロ/ビアトリクス・ポター/ココ・シャネル/ビリー・ホリデイ/アンナ・パヴロワ/ミーラー・バーイー/マヤ・アンジェロウ/ジョージア・オキーフ/エミリー・ブロンテ/サラ・ベルナール
●フローレンス・ナイチンゲール/ヘレン・ケラー/アン・サリバン/メアリー・シーコール/シーリーン・エバーディー/マリア・モンテッソーリ/マザー・テレサ/ワンガリ・マータイ/エリザベス・ブラックウェル/エバ・ペロン
●マリー・キュリー/レイチェル・カーソン/エイダ・ラヴレス/ヒュパティア/ロザリンド・フランクリン/メアリー・アニング/キャサリン・ジョンソン/ドロシー・ホジキン/ダイアン・フォッシー/ワレンチナ・テレシコワ
●マララ・ユスフザイ/リゴベルタ・メンチュウ/アメリア・イアハート/ハンナ・セネシュ/ローザ・パークス/ヌーア・イナヤット・カーン/エメリン・パンクハースト/キャシー・フリーマン/田部井淳子/アンネ・フランク
構成/北澤智子
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