毎日生活していると、いろいろなことがあります。
職場の人間関係で困っている、友だちとギクシャクしてしまった、子育てがうまくいかない……。だから不安でしかたがない。新型コロナウイルスの影響もあって生活や将来への不安を抱えていたり、なかには「理由もわからない不安」にかられて生きづらさを感じている人もいるでしょう。
そんな困ったことやピンチにおちいったとき、ちょっとした小さなコツで乗り越えることができるといいます。『生きる力ってなんですか? ピンチを乗り越える齋藤メソッド』(2021年6月30日刊)には、そんな「生きづらさを楽にしてくれるアイデア」がいっぱい詰まっています。
著者は、『声に出して読みたい日本語』でおなじみの教育学者・齋藤孝さん。子どもたちに向けたメッセージが込められているこの本、実は子どもばかりでなく、大人の人間関係の不安やストレスの解消にも役立つんです!
齋藤メソッドは誰にでもできる簡単なものばかり。ここでは『生きる力ってなんですか? ピンチを乗り越える齋藤メソッド』から、特におすすめの3つのコツをご紹介します。
心を楽にするコツ①
こもりがちの気持ちを上向きにする呼吸法「ゆさゆさトントン吐き出し法」
齋藤さんは、長年呼吸法を研究してきました。大学院にいたころには、「息」というテーマで教育の在り方を研究していたのです。『鬼滅の刃』で一躍注目されるようになりましたが、日本人は、昔から心身を安定させる方法として呼吸法を大切にしてきました。
正しい呼吸をすることで、心が落ち着いてコミュニケーション力がつき、集中力が高まります。
気持ちがこもりがちになったときにおすすめの呼吸法は、「ゆさゆさトントン吐き出し法」です。
身体の力を抜いて立ち、足の裏を床につけたまま、ひざを曲げ伸ばしして身体を上下に揺さぶります。プールで耳に水が入ったときに頭を傾けてトントンするような感じです。全身の力を抜いて、手をブラブラさせながらやります。
トントンのリズムに合わせて、息を、
「ハッハッハッ……」
と、どんどん吐いていきます。
身体や脳にたまったゴミや汚れをどんどん吐いて、みんな捨てちゃうイメージで。息を吐き切ったら、軽く息を吸って、また「ハッハッハッ……」と息を吐く。これを5回繰り返します。身体を揺さぶるだけですが、頭がスッキリします。
息を吐く効果的な方法をもうひとつ。
たとえば、人にちょっといやなことを言われたとき、おへそから指3本くらい下(へそ
そして、
「人が言うことなんて、気にしない!」
と思うと、気持ちがすーっと落ち着きますよ。
心を楽にするコツ②
毎日を「ちょっといい日」で終わらせる。
へこんだときは、自分にごほうびをあげて「いい日」にチェンジ!
「毎日がつまらない。いいことなんて何もないな……」
というあなた。ちょっと待ってください!
ほんとうにそうでしょうか?
「生きる力」を育てるためには、まず今日一日をどう過ごすかが大切です。一日いちにちをいい日にしていく。この積み重ねが、将来の幸せにつながっていきます。齋藤さんは、
「今日はいい日だった」
と思って一日を終えることができる、ちょっとしたコツがあるといいます。
夜、ベッドに入る前に、
「普通の日だったけど、ちょっとだけいいことがあった」
と思うと、胸があたたかくなります。いい気分で眠れそうですね。
この「ちょっとだけいいこと」を見つけるのがコツです。
「今日は友だちと趣味の話ができて楽しかった」
「すごくおもしろいアニメをみられた」
ということでいいんです。
齋藤さんは、ちょっと物足りないと思った日には、
「コンビニでチョコもなかアイスを買って食べる」
ことにしているそう。
「今日は好きなアイスを食べられたから、いい日!」
と思って一日を終わらせるんです。
もっとへこんだ日には、うなぎを食べることにしているそうです。うなぎを食べれば、悪い一日が逆転! いい日になっちゃう。
自分にごほうびをあげて、「今日はいい日」で終わらせるんですね。
心を楽にするコツ③
スケジュール帳にニコニコマークを描くと「いい日がいっぱい!」上向き気分に
ほんのちょっといいことがあったら、スケジュール帳に「ニコニコマーク」を描き込むのも、いい日にするコツ。
齋藤さんは、こんなふうにしているといいます。
「今日の授業は学生たちと楽しくやれてうまくいった」ニコニコマーク。
「講演会で、観客から笑いが取れた」ニコニコマーク。
「テレビをみて爆笑した」テレビ番組の内容を書いてニコニコマーク。
スケジュール帳に描かれたたくさんのニコニコマークが目に飛び込んでくると、「いい日がいっぱいあった!」
という気分になりますね。
困ったことがあったりピンチにおちいったり、生きづらさを感じたら、やみくもに不安に思う心をほぐしましょう。自分では変えられないことは、できるだけ心配しないようにするんです。
そして、ちょっとだけ違うほうから眺めてみて、ほんの少し気持ちを変えてみる。
そのうえで、どんなに小さなことでもいいから、
「今やれることはなんなのか」
を考えてみる。このような心との付き合い方を知っているだけで、かなり気持ちが楽になるそうですよ。ぜひ試してみてください。
『生きる力ってなんですか? ピンチを乗り越える齋藤メソッド』
子どもから大人まで、簡単&すぐできる<齋藤メソッド>が満載!
教育学者・齋藤孝による「生きる力」を育む一冊。
友だち関係や、勉強など学校のこと。将来のこと。うまくいかないとき、不安になってしまったとき、どうしたらいい? そんなときに必要なのが、「生きる力」です。じつは、新しくなった学習指導要領のテーマは、「生きる力 学びの、その先へ」です。つまり、国の方針としても、学校生活を通して、子どもたちに「生きる力」を身につけてほしいと考えている、ということです。そこで、今、必要とされる「生きる力」が身につく<齋藤メソッド>をくわしくご紹介します。きっと不安な気持ちから抜け出し、ピンチを乗り越えることができるでしょう。
高木香織(たかぎ・かおり) 編集者・文筆業
出版社勤務を経て編集・文筆業。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。
文/高木香織
齋藤孝(さいとう・たかし)
1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。専門は、教育学、身体論、コミュニケーション技法。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(草思社)で毎日出版文化賞特別賞を受賞。NHKEテレ「にほんごであそぼ」総合指導。著書に、『地アタマを鍛える知的勉強法』『すごい「会話力」』、「齋藤孝のイッキによめる!」シリーズ(以上、講談社)ほか。著書発行部数は合計1000万部を超える。