肩の力が抜けたいまが、わりと居心地がいい


「できるだけ子供にとって変化やリスクの少ない人生に、といろいろ計算して学校選びまでしましたが、結局その学校にはご縁がありませんでした」

合格しなかったこと自体は残念だったそうですが、その経験から、いろいろと計画しても人生にはコントロールできないことがある、ということを改めて体感したそう。

そこからは肩の力が一気に抜けたと言います。

「離婚したい! と熱望していた時は、仕事をしながら子供の成績に一喜一憂するなど、夫以外にも多くのプレッシャーを抱えていたんです。
なのに、ストレスの原因をすべて夫のせいとして捉えていました。なので、ケンカのたびに『この人と離婚したら幸せになれるかも』と思っていたんです」

Aさんのように、ストレスの原因が全て夫、と感じてしまい「離婚したら幸せになれるかもしれない」と思う方は潜在的に多いといいます。

「今でも幸せか? と聞かれれば、普通です、と答えます。
けど、以前より肩の力が抜けたのか、イライラすることが格段に減りました。夫のことを人としてどうなの? と思うこともまだありますが、子供にマイナスな影響を与えなければいいか、という考えにまで落ち着いています」

Aさん曰く、当時は、離婚は結婚や転職と同じく、「○○したら幸せになれるかも」という条件の一つとして見ていたそうです。

「でも結局日々の幸福感や達成感って、もっと複雑な要素が絡み合っていますよね。
特に最近、違う県に住んでいる親の体調がよくないらしく、すごく心配しています。
でもコロナ禍だからなかなか会いにも行けず……。
そんな時に意外にも夫が心配してくれて、ふと見直したり。かと思えばまたイラっとしたり。その繰り返しですが、以前ほどは追い詰められなくなりました」

真面目で頑張り屋さんで、生き方にもこだわりのあったAさん。
完璧主義なところもあり、しかもその完璧主義な理想をこなせてしまう能力の高さから、知らないうちに夫にも多くのものを求めていたのかもしれない、と振り返られていました。

 
 


今回の離活マニュアル
「○○したら幸せ」はいつか変わるかもしれない


ご自身の経験を、「右手で電卓を弾いて、左手に夢を持っていた」と表現されていたAさん。
感情の赴くままに行動したいと思いながらも、片隅には冷静な自分がいる。かといってその冷静な自分が立てた計画どおりに行かないのもまた、人生なんですよね。

であれば、その時々の「○○なら幸せ」は、すべて自分の価値観から生まれるもので、しかも適宜変更可能、というくらいに柔軟性のあるものにしておけば、葛藤は少なくなるのかもしれない、なんて思ったのでありました。

構成/片岡千晶(編集部)

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