パリ在住のミモレブロガー大熊洋子さんが、夏の終わりのキャミソールワンピースについて綴ります。
メドモワゼルパリの、夢の様に素敵なドレスは、至ってシンプルなキャミワンピ。
この夏に、予期せず落ちた恋の、最初のデートに予定していたアイテムは、お天気に嫌われて一旦見送りになっていた。
太陽が戻って来た夏の終わりに、とっておきの装いを彼に見せる事が出来て心底嬉しかった。
ブルーグレーのベースカラーに、鮮やかなイエローのタイダイは、いつか見た、真夏の夕暮れ時の空の色と似ている。突然の雷雨の後、晴れ間が差し始めた瞬間。遠くに虹を見た束の間。そんな一瞬を切り取った様な、ドラマチックなプリントは、私を華やかに包み込んでくれる。
いつも目敏く私の出立ちを褒めてくれる彼が、その日は言葉少なだった。代わりにそっと繋いでくれた手を、私は強く握り返す。ねぇ、これ夢じゃないよね。始まったばかりの、お互いの気持ち以外に何の保証もない関係は、今この手を離したら、全てが消えてしまいそうで怖くなった。大人の恋は、いつもどこか切ない。
一枚の服と対話を重ね、こうやって自分だけの小さなストーリーを作り出す事があっても良い。装うという事は、至って文学的な作業で、私の内面を耕し、人生を豊かに導いてくれるのだから。
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