「私ひとりになったら、どこか施設に入りたいわ〜」。時折そんなことを話す筆者の母は、現在は実家で父の介護をしながら暮らしています。“施設に入りたい”が真意とは思わないものの、そう口にする背景には母の母、つまり筆者の祖母が“ケアハウス”と呼ばれる施設に入居していたことも影響しているのかもしれません。そういえば、最近夫と近所を散歩していた時のこと。いかにも高級そうな立派なマンションが完成していることに気づき、「これも“サ高住(さこうじゅう)”か。最近どんどん増えてるな〜」と夫。“さこうじゅう”ってなんぞや? と首を傾げる筆者。“サ高住”というのは、「サービス付き高齢者向け住宅」なのだそう。一口に“施設”と言っても色々あるのだな、母がイメージしている“施設”はケアハウス? サ高住? などとぼんやり考えた筆者でしたが、“施設”の種類はこんなもんじゃなかった! ということを、作家&教育・介護アドバイザーである鳥居りんこさんの『増補改訂版 親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』で知ることになるのです……。
介護申請の手続きから施設探しの方法まで、自身のお母様の介護体験を交えながら教えてくれる本書は「介護は情報戦!」がコンセプト。そこで今回は本書の中から、介護初心者は混乱必至の老人向け介護施設にまつわるエピソードを、特別に一部ご紹介します!
サービスが手厚く費用が安い「特養」は超激戦!
著者である鳥居りんこさん(以下、りんこさん)のお母様は、「進行性核上性麻痺(しんこうせいかくじょうせいまひ)」という指定難病で、「要介護2」の判定が出ました。ひとり暮らしのお母様がいよいよ自力歩行が困難になってきたことを受けて、りんこさんは介護施設への入居を視野に入れ、老人ホーム巡りを始めます。しかし、初めての介護では何をどう進めてよいかわからず大混乱。
「とりあえず、母がショートステイで利用する特別養護老人ホーム(以下、特養)に申し込む。特養のメリットはひとつの施設で食事や入浴、排せつを含め、日常生活全般で手厚い世話を受けられる、プラスお国の補助が入っているので費用が安いことにある。
費用は、入所者の収入、施設が建っている自治体によっても違うが、おおむね月5万円から15万円程度で済み、しかも入居一時金が要らないのである。
格安な料金で看取りまで(医療措置が加われば話は別)を行なってくれる、家族にとっては安心・安全な場所である。特養で別途、費用がかかるとすればオヤツ代、理美容費、医療費などであるが、まあ、ここがすべての施設の中で一番、お得感が出るところである」
ちなみに、ショートステイというのは、介護老人福祉施設などに短期入所して、日常生活上の支援や機能訓練を受ける、高齢者の“お泊まりイベント”のようなものだそう。
しかし、その後りんこさんは“特養”への入所のハードルの高さに唖然。入所を希望した特養で、係の人にこう言われたのです。
「ただ今、500人待ちです」
本書によると、2019年4月1日時点の労働相が発表した数字では、全国の特養待機者数は29.2万人。そう、特養への入所は超激戦なのです。
参考:介護にまつわる基礎知識「要介護・要支援認定」について
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