フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。

 

お腹いっぱいで満足しているお客様に、追加のデザートを頼んでもらいやすくする話術があるそうです。
コツは、選択肢を全て「YES」にすること。
相手の焦点や視点をズラす、のだそうです。

 

「デザートはいかがですか」
は、YESかNOか、の質問なので、
「頂きたいけれど、もうお腹いっぱいです」
という返事をされる可能性も。

そこで、
「お腹のお加減はいかがですか。当店は自家製プリンが人気なのですが、季節ですので、今日はアップルパイもございます」
などと勧めると、選択肢は、デザートを食べるか否か(YESかNOか)から、プリンかアップルパイか(YESとYES)に変わり、
「別腹だもんね」
「どっちも美味しそう〜」
となる可能性が高まります。

こんな風に意図的に視点や焦点をずらすわけでなくても、何かに流されてずれていく、ということは、色々な場面で起こります。

たとえば、今問題になっている、国会議員に月100万円が支払われる「文書通信費」。
月割のため、1日だけでも全額100万円が支給され、領収書も何もいらない、余った時に精算もいらない費用(税金)です。

自民党や立憲民主党との間で、「日割にしよう」という話でまとまりかけたのですが、橋下徹さんが、こう指摘し続けています。
大事なのは「使い道を明らかにすること」。
日割で手打ちにしても、本質は何も変わらない。

本来、領収書が必須の民間の常識とかけ離れている文書交通費のあり方を考えなくてはいけないのに、月割に焦点があたった途端、月割か日割か、ばかりが問題となり、橋下さんなどの声がなければ、根本的なあり方の問題は置き去りになっていたかもしれません。

18歳以下のお子さんがいる家庭への10万円支給も、世帯収入が基準ではないことなど、色々と見直す必要が指摘されていましたが、今では、残りの5万円をクーポンにするか現金支給も選べるようにするか、に焦点があたり、報道でも、根本的な議論は置き去りにされています。

意図的でなくても、気がついていたら論点がずれていた、すり替わっていた、ということは本当に良くある話なので、ものごとの本質や根本を、忘れないことの大切さを実感しています。

何より私自身、このコラムを書きながら言いたいことがズレていく……ということが頻繁に起こるので、気をつけなくては。


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