フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。

 

「北窓」と聞いて、何を思い浮かべますか。
ヨーロッパなどでは北向きの部屋が人気、などでしょうか。
これは、直射日光が入らないため家具や本が痛みにくい、光量が安定している、順光のため景色が綺麗に見える、などが理由だそうですね。

今回お話しする「北窓」は、文字通り「美味しい」話です。

潰したもち米をあんこで包む、お彼岸でお馴染みのあの和菓子は、春は「ぼたもち」、秋は「おはぎ」と呼ばれることはご存知の方も多いと思いますが、実は夏と冬にも異なる呼び方があるのです。私は東大王で出題されるまで知りませんでした。

 

ぼたもちとおはぎは、形も、あんこの種類も、異なるそうです。
ぼたもちは、名前の由来ともなっている春に咲く牡丹の花に似せた、大きな丸い形。
おはぎは、秋の七草の一つ、萩の花に似せた小ぶりの俵型。

さらにぼたもちの場合、冬を越した皮の硬い小豆なので、皮を漉してこしあんに。
おはぎの場合は、旬のとれたての小豆は皮も柔らかいため、そのまま潰した粒あんに。
諸説ありますが、季節によって、名前も、形も、調理法も、異なる。
四季を慈しむ昔の人々の思いが感じられますよね。

私はどちらかと言えば粒あん派ですが、皆さんはどちら派ですか? ちなみに中にあんこを包んできな粉をまぶしたものが1番好きです。

さて、夏と冬の呼び方ですが、夏は「夜船」(よふね)、冬は「北窓」(きたまど)。
こちらは、春秋とは趣が異なり、ダジャレが由来だそうです。

おはぎのもち米は、臼で搗(つ)かずに潰して作るため、「いつ搗いたか分からない」。
そこで夏は、同じく「いつ着いたか分からない」、暗い夜に着く船にかけて、「夜船」と呼ばれるようになりました。
冬は、搗くことをしない、つまり「搗き知らず」を、「月知らず」にかけて、月が見えない北向きの窓、「北窓」と呼ぶようになったそうです。
同じ和菓子でこうした言葉遊びをしてしまうのは、なんだか生活を楽しむ天才、という印象です。

明日12月22日は冬至。
「北窓」の季節ですね。
古くから、小豆の赤には魔除けの効果があるとされていたそうで、邪気を払うものとして「北窓」を頂くのも一興かもしれません。

でも、一般的に楽しまれるのは、かぼちゃと柚子湯、でしょうか。
ちなみに柚子湯も、江戸時代のダジャレが由来だそうです。
「冬至」を「湯治」にかけて、「柚子が効く」は体の「融通が利く」にかけて、つまり、元気になる。
実際、柚子の皮には、風邪予防にいいと言われるビタミンCや、血行改善を促す成分などが含まれているそうで、ダジャレだけではない、昔の人の知恵には驚くばかりです。

改めまして皆さま、今年は「コトノハノコト」を読んでくださり、コメントも寄せてくださり、本当にありがとうございました。
ご多用の年の瀬、柚子湯などでどうぞご自愛頂きまして、良いお年をお迎えください。
新年は、1月11日からです。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

馬場典子


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