竹二:何か、難しそう。

父:確かに難しい。厳密にやろうとすれば専門的な知識がいるし、情報も必要だからね。手法の話はここではしないけど、とにかく株の売り買いは、いま2万円だとか、この前1万円だったというのはあんまり関係ないんだ。「この株価になるはずだ」という予測から見て高いか安いかを判断しないといけない。株式市場は将来しか見てないんだよ。過去は関係ない。株価のチャートで表現されているのは既に終わったことだということ。これはこの先の株価には何も関係ないということを覚えておいてほしいね。

 

さてもう一つ、かつやをやってるアークランドサービスホールディングスを見てみよう。この会社が上場したのは07年8月30日のこと。公開価格20万円で売り出した。その後の株式分割が行われて、10年前の調整後株価は170円だった。

梅三:いま2267円だから……ってことは13倍か!

父:かつやは俺好きで近所にあったから昔からよく行ってたんだよね。ある時からゴルフ場に行く帰り道なんかにぽつぽつでき始めて、店増やしてるなって感じてたんだよ。そうしたら上場するっていうニュースが出た。

 

カツ丼が教えてくれること

※写真はイメージです(Shutterstockより)

竹二:でも買わなかったんだよね。

父:かつやで食べるのは好きだけど、こんな商売が伸びるとは思えなかった。カツ丼490円の会社がそんなに儲かるとは思えなかった。帰るときに必ず100円引きの券をくれるから、リピートすれば実質390円プラス消費税でしょ。そうしたら牛丼チェーンと値段は同じ。でも牛丼よりカツ丼作る方が明らかに手間がかかるし、お客の滞在時間もカツ丼店の方が長い。だから利益率は牛丼チェーン以下のはずで、そんなに儲からないし、店も増やせないだろうって思った。

梅三:あの大根の漬物おいしいよね。皆で行くと壺が空っぽになるくらい食べちゃうもんね。あれもタダでしょ。

父:そうなんだ。最初は父さん以外の人も懐疑的だったと思うよ。だって新規上場したときの公開価格は20万円だったけど、初値はそれ以下の19万円だったから。公開時の時価総額は50億円と、目立たない中小企業レベルで特に期待できなかった。ところが地道に店を増やして、新商品どんどん出して客単価を上げて、コッコツ成長していった結果がこれだ。過去10年で13倍。俺は本当に後悔している。全くもって先見の明がなさすぎる。

竹二:そうか、俺はかつや行ってもそういう目でお店を見たことなかったな。

父:株を始めると、そういう点で物事を見られるから、視野が広がるよ。そうやって物事を見ながら、自分の予測と結果を突き合わせる経験を積み重ねていくと、どんどん見る目が養われる。先の話だけど就職先選びにも間違いなく役立つよ。