「長生き」には生活習慣も大きく影響する
これは各年齢における「余命」にも見てとることができます。例えば、令和2年の日本人のデータ(参考文献2)で、男性の平均寿命は81.6歳、女性は87.7歳となっていますが、65歳の人の平均余命を見てみると、男性で20.1年(すなわち85.1歳)、女性で24.9年(すなわち89.9歳)となっています。
また、80歳の平均余命を見てみると、男性が9.4年(すなわち89.4歳)、女性が12.3年(すなわち92.3歳)となっています。このように、歳を重ねれば重ねるほど、より長く生きる確率が増えていきます。
そういう人が病気にならないのは遺伝子の問題じゃないのか、と諦めてしまうかもしれませんが、実はそうでもありません。確かに「長生きをする」ということ自体は遺伝子の影響を受けていそうなのですが、病気と関連した遺伝子の情報を比較してみると、100歳まで生きる人と一般の人の遺伝子を比べて、病気に関連した遺伝子変異の数というのはあまり違いがないことが知られています(参考文献3・4)。
「病気にならない」ということには、遺伝子の助けなどもあるものの、日常の健康的な生活習慣も大きく関わっているようなのです。
先進国において100歳を迎える世代は、最もその割合の増加が著しい世代でもあります。米国および英国の報告によると、1990年代のデータでは、100歳以上の人口は1万人に1人でしたが、現在では5000人に1人とその割合は2倍に増加しています(参考文献5・6)。
私自身も高齢者専門の外来で仕事をしていて、100歳や100歳に近い年齢の患者さんの診療にあたることは稀ではありません。そして、100歳にして自分の足で歩いて来られ、しっかりと自分で受け答えをされる患者さんに出会うこともあります。
そのような方に「長生きの秘訣はなんですか?」と伺うと、それぞれ違った答えが返ってきて、百人いれば百通りの生き方があるのだなと改めて感じさせられます。
前回記事「高齢者の6割が高血圧。放っておくと脳卒中や心疾患のリスク増に!」はこちら>>
参考文献
1 平成28年5月26日 厚生労働省保険局「高齢者医療の現状等について」. https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000125582.pdf (accessed Dec 5, 2021).
2 令和2年簡易生命表の概況|厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life20/index.html (accessed Dec 12, 2021).
3 Capri M, Salvioli S, Sevini F, et al. The genetics of human longevity. Ann N Y Acad Sci 2006; 1067: 252–63.
4 Mari D, Coppola R, Provenzano R. Hemostasis factors and aging. Exp Gerontol 2008; 43: 66–73.
5 Newman AB, Murabito JM. The epidemiology of longevity and exceptional survival. Epidemiol Rev 2013; 35: 181–97.
6 Perls TT. The different paths to 100. Am J Clin Nutr 2006; 83. DOI:10.1093/AJCN/83.2.484S.
写真/shutterstock
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