フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。
今シーズンもドラマが始まりましたね。早速、菅田将暉さん主演の『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系、月曜21時)にハマりました。このコラムが更新される18日にはすでに第2話が放送されていますが……。
主人公は、家に遊びに来る友達も彼女もいない、一見大人っぽくクールな大学生。洞察力、記憶力、想像力などがずば抜けていて、たとえ話も秀逸で、痺れます。周囲には、「ウザっ」とか、「面倒くさっ」とか、言われてばかりなのですが(笑)、みんなが当たり前と思い込んでいることや、気にも留めていないことにも、子供のようなにピュアな心と大人顔負けの頭脳でまっさらに向き合っていて、おかしなことや不思議なことが気になってしまう(そしてつい口にしてしまう)キャラクターはとても魅力的です。
日頃自分が感じていること(たぶん周囲からするとウザっなこと)が、こんなにもエンターテイメントになるのか! ということにも感銘を受けました。多くの原作ファンがきっとそうだったように、色んな場面の色んな言葉に、私も心の中で大きく頷きながら見ていたのですが、以下、原作をご覧になっていなくて、これからドラマをご覧になる方は、ご容赦ください。
最初に強く印象に残ったのが、「真実と事実」の話です。
何年か前のあるニュースで、当事者の口から「真実」という言葉が繰り返し出てきて、印象に残りました。真実の方が事実よりも本当のことのような響きを持っているけれど、その時はっきりと認識できました。「真実」は、人によって見え方や捉え方が変わるもので、「事実」は、揺るぎようのない、実際に起こった客観的な出来事のみを指す、ということを。やっかいなのは、「事実」とは時に異なる「真実」が、必ずしも「嘘ではない」という点で、むしろ、「当事者にとっては」嘘ではないことの方が多い気さえします。
そして、報道する側も、受け取る側も、まずこの違いを知っていること。さらに、情報の中のどの部分が揺るぎない「事実」であり、どの部分が不確かな「真実」を含んでいるのか、を意識して見極めること、が大切だと感じました。
この作品では、「真実は人の数だけある」とも語られています。
取り調べ中、主人公が刑事に向かって、よく知らない善意の第三者(目撃者)と同じくよく知らない容疑者の自分(主人公)と、どちらかの言い分だけを信じるのはおかしい、という話もします。情報源が「確か」なものなのか、「確からしい」ものなのか、は似て非なるもので、取材や報道をする上でも重要なポイントです。個人としても、アナウンサーとしても、共感する言葉がたくさん溢れていました。
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