元競泳日本代表の伊藤華英さんと東大病院の能瀬さやか先生が、毎回さまざまなゲストと「女性アスリートの生理問題」について語り合うYou Tube番組『Talk up 1252』。
今回は、体操競技の日本代表選手として、北京、ロンドンと2度のオリンピック出場を果たした新竹優子さんが登場。
現役当時は、審美系競技につきものの過度なダイエットも日常の一部だったそう。
成長期の栄養不足が原因と考えられる「無月経」に関する当事者の貴重な体験をお話しいただくとともに、能瀬先生からは、無月経が身体に及ぼす影響や治療方法についてご説明いただきました。
3ヶ月以上月経がない選手も
当たり前のようにいた
伊藤さん(以下、敬称略):早速ですが、現役時代の月経の状態をお伺いしてもいいですか?
新竹さん(以下、敬称略):私の場合は、20歳を超えても初経がありませんでした。ただ、当時は競技に夢中だったので、そのあたりは無頓着で。知識がなかったせいもありますが、特に問題視もしていませんでした。
伊藤:選手同士で、月経の話をすることはなかったのですか?
新竹:たまにはありました。初経が来ていないのは私だけでしたが、他の選手も3ヶ月以上ないケースは珍しくなくて。正常ではないという認識はありましたが、特に気にも留めずに流してしまっていたんです。
能瀬:本来、女性の平均初経年齢は12歳頃。
18歳で初経がない場合は「原発性無月経」と診断され、遺伝子の異常を疑うなど精密検査が必要な状態なんですよ。
月経がないということは、その間ずっと卵巣から女性ホルモンが分泌されず、ホルモン値の低い状態が続いてしまうということ。
骨密度や血管機能、糖質代謝や自律神経など、全身への影響が懸念されます。
周囲に、受診を勧めてくださる方がいらっしゃるとよかったのですが。
新竹:そうですね。私自身、月経が来て身体が女性らしくなると、競技のパフォーマンスが落ちるのではないかという不安があって……。
伊藤:当時、無月経に関する知識はどのくらいあったんですか?
新竹:ほとんどありませんでした。体脂肪率がずっと1桁台だったのですが、初経がないのはそのせいかな、というくらいで。
伊藤:審美系の競技はスタイル維持がつきものですから、体重管理も厳しくされていたのでしょうね。
新竹:体重は、小学校低学年の頃から、毎日練習の前後に測っていました。
数値が乱れないように朝食の重さを測って食べたり、「これとこれでこれくらいの重さだから、あと何g食べられる」などと考えながら食べていました。
私の時代は、とにかく体重が軽い方がいいという認識があったように思います。ただ、今は、競技に求められる体型も少しずつ変わってきている気がしますね。
【写真】オリンピックで活躍した新竹選手
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1-2 写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ
3 写真:アフロ
4 写真:青木紘二/アフロスポーツ
5 写真:YUTAKA/アフロスポーツ
6 写真:アフロスポーツ
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新竹優子(しんたけ ゆうこ)
元体操競技女子日本代表/博士(コーチング学)/現 筑波大学 体育系 助教・体操競技部女子コーチ 3歳から兄の影響で体操競技をはじめ、2007年にインターハイ団体・個人総合優勝。翌年2008年北京オリンピックでは、日本代表として初出場し、団体5位入賞に貢献。2009年から2011年まで日本代表として世界選手権をはじめとする国際大会に出場し、2012年ロンドン五輪では団体総合8位に入賞、2013年東アジア競技大会を最後に現役引退。2回のオリンピック出場経験を活かし、後進の育成や教育・研究活動を行うとともに、講演活動、大会解説などの幅広い分野で体操競技やスポーツの魅力を伝える活動をしている。