不便なことは大してない

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大量の雪が降ると、夜中からホイールローダーが数回来て除雪してくれます。

「それでも田舎暮らしならではの不便なこともあるのでは?」と尋ねると、捧さんはこう話します。

「それが不便だと思うことは大してないんです。確かに今住んでいるエリアには病院があまりないので、東京の時は保育園帰りにふらっと寄れていた小児科や耳鼻科が少し遠いかなと感じたり。目黒に住んでいた頃は電車とバスがメインだったので、車生活ってこういうことかと思ったり。不便というより、ここでの暮らしを1つ1つ実感していくという感じですね。

 

それから、今まで当たり前だと思っていたことが違ったんだと知ることはもちろんあります。たとえば、地元の銀行に手続きに行った時、何でもシステマチックにできているのは東京だけだったんだと知ったり。クレジットカードが使える店が少ないので現金かPayPayがないと困ったり。でもそれは暮らす上では大したことではなくて、やっぱり都会でできなかったことの方が優っています」

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栗も近所で採れたもの。

 

今はここでしかできないことを


夫婦でデザインの仕事に携わる職業柄、東京を離れることに対する不安はなかったのでしょうか。

「今はコロナの状況に左右されますが、本来は“家は新潟だけど仕事は東京”というように行き来するイメージがあったので、回数は減っても行き来していればいいかなと思っていました。確かに東京にいれば街を歩いているだけで今の流行りや方向性が入ってくるので、こっちでは自分でアンテナを張って意識して仕入れないと今のことがわからなくなっていくんだろうなとは思います。でも逆に、今はここでしかできないことをやっていきたいと思うようになりました。

これまでやってきた設計の仕事は、お客さんからデザインの依頼があって初めて動く受け身の仕事がメインでしたが、もう少しこちらからアプローチできる仕事もしたいよねと夫と話していて。それが何がいいのかずっと模索していましたが、新潟に来たことで、もっと地域に貢献できる仕事をやりたいという話になったんです。テーマが絞られたというか、考えやすくなりました」

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赤く染まる粟ヶ岳を見に、自宅から車で20分の温泉「加茂七谷温泉美人の湯」へ。


地域に人を増やすための手伝いをしたい


ご自身の子供のことも考え、もっと地域に人が増えれば……と夫妻は今思っています。そのため、移住希望者が来やすいように地域の空き家を整えたり、物件の有無を整理して貸したい人と借りたい人をつないだり、建物をリノベーションするような仕事が理想かもしれないと考えるようになりました。実際、市役所の方とも話をしていて、近い将来形になればと思っているそう。また、伝統工芸に携わる人から相談を受けることもあり、商品化するのが良いのか、ワークショップを企画して広く知ってもらうのが良いのか等、いろいろなことを考えています。

「これからは、そういった1つ1つのことをボランティアではなくビジネスにも絡めつつ、地域の人と関わりながら変えていければと思っています。ここで見聞きするものの中には面白いものがたくさんあります。そういったことに触れながら、今は自分たちに何ができるかを探っている段階です」

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新潟で出会うさまざまな景色
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次回は山形に子連れで移住した、ミモレファッションエディターの昼田さんの話をお届けします。
 

撮影/捧直美
取材・文・構成/井手朋子

 

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