従業員の気持ちより利益を優先する「経営服従型いじめ」

 

──企業の利益と感染の危険を天秤にかけること自体がおかしいのですね。

三つ目の傾向がまさにそれを象徴していて、主にコールセンターで働く非正規雇用の方々からの相談が多いのですが、職場では十分な感染対策が取られていないのに出勤を強いられるというパターンです。コロナ感染が怖いという理由で休んでしまうとシフトを自由に決められなくなるらしく、そのペナルティを避けるために泣く泣く出勤しているそうです。そして、その苦しみを味わっている人の大半が女性です。

 

──感染を避けるために休んでも、感染して休みを取っても給料が出ないという状況は、明らかに異常ですね。

実はこの問題にも突破口があって、万が一職場でコロナに感染したら労災を職場に申請すればいいのです。そうすれば休んでも給料が出ますし、その給料の大部分は厚生労働省の労災保険で補うことができるので職場側も金額的には大きな痛手ではないと思いますが、労災申請できることを従業員に伝えない場合が多いのです。コロナ感染による労災申請があっても、一般的な労災と異なり労災保険料の負担は増やさないと厚生労働省が明言しているのにもかかわらずです。

──従業員の気持ちより経営の論理を優先してしまうのですね。坂倉さんが『大人のいじめ』で書かれていた「経営服従型いじめ」を象徴している気がします。

労働者を使い捨てにする職場の在り方そのものが「経営服従型いじめ」ですよね。そこで労働者の皆さんには職場が自分の健康を守ること、そして休業補償することは当然のことであり、働かせ方に違和感を覚えたら表明することもまた当然だという意識を持ってほしいです。今はそこに行く前に自信をなくしている人がすごく多い。でも、苦しい気持ちを押し殺してまで働くのは決して当たり前ではないのです。