フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。

 

昔から名字に「さん付け」して呼んでいる、または名字をもとにしたあだ名の友達が多いのですが、結婚した後も、そのまま呼んでいます。

先週の「未婚か既婚かで女性の呼称が変わる」という話から、これもまた同級生に聞いてみると……
「旧姓からの付き合いの人は、旧姓のままで呼んでくれた方が嬉しい」という声が多かったです。
どう呼んでもあなたはあなた、あなたと私は変わらない、とは思っていても、私にとっては愛着のある呼び名なので、ありがたい反応でした。
そんなやり取りの中、職場が同じ学生時代からの友人が、職場では結婚後の姓で、同期で集まる時などは旧姓で、と呼び分けていて、自分の心情に配慮してくれていることに気づいた、という人も。

 

また、「ママ友と連絡先を交換すると、旧姓のままだったり、旧姓併記していたり、という人が多いから、もしかしたら色んな思いや事情もあるかもしれないからと、ファーストネームで呼んでいる」という人もいました。
ママであることは喜びで、子供のことを愛していても、○○くんママ、○○ちゃんママ、とばかり呼ばれる日々に、自分のアイデンティティを見失ってしまう人も少なくない、と聞いたことがあります。
旧姓やファーストネームで呼ぶことは、肩書きではなくその人自身を見ている、というメッセージにもなるのかもしれませんね。

英語教師をしている友人は、「お年頃の生徒たちが既婚か未婚かを気にすることが面倒だからと、Msで呼ぶように伝えていた」そうですが、これを機に、同僚のネイティブの先生にも聞いてくれました。
すると、「Mrs.でもMissでももちろんMsでも全く気にしない!」というお返事だったそう。最初の授業で自分のことをMissと呼ぶように伝え、今後結婚しても、そこは気にする必要はないので、Missのままで行く、とのこと。初対面の時にどれで呼んで欲しいかを伝えればいいだけのことだし、もし違う呼び方をされても全く気にすることではない、と。
色んな意味で自己が確立していると、こういうところにも違いが出てくるのだなぁ……。

その先生の元に「“he”でも“she”でも呼んで欲しくないから“it”で呼んで、と言ってきた生徒がいたそうです。そこで、「人だから“it”ではなく“they”と呼んで、と言えばいい」と教えたら、とても喜んでいたそう。
我々の学生時代は複数名詞だったtheyは、今はこうして使われることも多いそうです。
何より、英語の授業を通して、どう呼ぶか、どう呼ばれたいか、生徒自身に気づきがあったことや、素直にその思いを伝えたということが、とても素敵だなぁと思いました。

子どもの頃、「○○ちゃんて呼んでいい?」と気遣い合うこともあれば、勝手につけたりつけられたりしたあだ名で傷つけたり傷ついたり……ということもあった気がします。
全く気にしない人もいれば、気になってしまう人もいる。気持ちを伝え合うことはやっぱり大切なのだなぁと改めて。

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