2022年3月4日に、パーソナルマガジン『栗原はるみ』を創刊した料理家の栗原はるみさん。3月5日の75歳の誕生日を迎えた栗原さんが、自分のために作りたいレシピやライフスタイルを紹介していく新雑誌です。
自らの名前をタイトルにした理由は、そうすることで「自分に責任を持ちたかった」だそう。2年前にご主人を亡くされた喪失感は、今も薄れていないと栗原さん。
この雑誌には、残りの人生をより楽しく生きていくために、自身と向き合った答えが詰まっています。そこで今回、片岡千晶編集長とともに、新雑誌創刊の舞台裏を語ってもらいました。
新しい人と新しい環境で、新しい本を作りたいと思った
片岡 初めてお会いしたときに、栗原さんから「やり残したことをやりたい」と言われて、とても意外でした。25年間もご自身のパーソナルマガジンを続けてこられた方が、そんなことをおっしゃるなんて、と。
栗原 人生を振り返るというと大袈裟だけど、75歳を迎えるときに、やってこなかったことがいっぱいある、と思ったんです。それを集めて雑誌を作ったら、楽しそうだなあと思ったのが始まり。それから新しい人と、新しい環境で、新しい本が作ってみたいと思って、これまであまり付き合いのなかった出版社に声をかけてみたんです。
片岡 講談社では、ずいぶん前に電子レンジのレシピ本を出版していただいていたくらいで、あまりご縁がなかったんですよね。
栗原 そういう新しい環境で、本当に私が好きなものを紹介する雑誌を作りたかったんです。
片岡 今回の雑誌では、お料理だけでなく、ファッションやインテリア、器、美容に関することや身体のお手入れなど、はるみさんのライフスタイルごと紹介していますよね。今まで見たことがない、栗原さんの姿が新鮮です。
栗原 ジーンズの特集もあるのですが、まず「そんなにジーンズが好きだったのか」と思う方が多いんじゃないかしら。仕事だからはいていると思われがちなんですが、人生をかけるくらいジーンズが大好きなんです。普段はスカートもはくんですけど、それも意外かもしれませんね。とにかく私、洋服がすごく好きなんです。
【写真】新雑誌『栗原はるみ』の中身を一部公開!
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雑誌『栗原はるみ』は、これからの私の人生そのもの
片岡 これまでの栗原さんは、妻として母として、「誰かのために、料理を作って家を整える」といったイメージが強かったと思います。今回の雑誌では、そういう“素敵な奥さん、お母さん”である面だけでなく、「一人の女性としての栗原はるみ」を表現することにこだわりましたね。
栗原 そうそう。自分が出すならこんな本、という気持ちで作っています。
片岡 コロナ禍に襲われている今、多くの人が自分を見つめるタイミングにきていると思います。生活そのものが変わって、自分は何者で、何が本当にやりたいのか、何をしたら幸せなのか……。栗原さんも、そんなタイミングだったんでしょうか。
栗原 私の場合は、夫が亡くなったのが大きいですね。夫は昨年秋まで出していた雑誌『haru_mi』が、25年を区切りに終わりになるのを、ずっと待っていたんです。自由な時間が増えたら、豪華客船に乗って旅行に行って、二人でのんびり過ごそうと約束していたのに……。でもただ悲しんでいるわけにはいかない、残された時間を悔いなく過ごしたい。それで、次の仕事がくるのを待つのではなく、自分で決めた仕事をしよう、と思ったんです。そのことも、新しい雑誌を始めるきっかけの一つになりました。
片岡 自分で決めた、ご自身のための雑誌、ということですね。はるみさんが本当に作りたい料理や好きなもの、好きなことしか扱わない、と最初からこだわっていましたね。
栗原 「死ぬまでにやりたい100のこと」を決めているんだけど、雑誌を通じて、一つひとつ叶えていこうと思っています。世の中、こんなに恵まれた人はいないわよね(笑)。まずやりたいのは、京都を極めること。今まで京都は何度も取材で行っているけれど、どうしても訪れるのは有名店が多くなっちゃうし、取材で初めて行ったお店ばかりだったんです。
片岡 今度、京都に下見に行きますよね。
栗原 今回の本で訪ねるお店は、ちゃんと自分で探して味わって、気に入ったお店だけにしたいと思っています。今まではライターさんがお話を聞いている間に私は撮影、という感じだったから、どこか消化不良だったんです。
これからは絶対に自分が「本当にいい」、と思ったものだけを厳選してお伝えしていきたいんです。
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