75歳の誕生日を迎えるタイミングで雑誌『栗原はるみ』を創刊した、料理家の栗原はるみさん。
新雑誌を一緒に作り上げた片岡千晶編集長と、気になる雑誌の中身や見どころ、そして今後について語ってもらいました。

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韓国語に英語、刺繍、ギター……毎日がチャレンジの連続


片岡 今回の雑誌は、すべてのコンテンツが栗原さんからの発信になっています。初めてお会いしたときに、開口一番「創刊号の特集は、週末をテーマにしたいの」と言っていただいたんですよね。

栗原 夫が亡くなって一人になって、毎週末の過ごし方が、ガラッと変わったんです。土曜の夜は必ず二人で外食に出掛けていたんですがそれもなくなり、どう楽しく過ごせばいいのかしら、と。そこで雑誌を通して、今の私がどうしているかをお伝えしたいと思いました。

 

片岡 創刊号はいわゆる「初めまして」の名刺がわり。週末をテーマにすれば、お料理はもちろん、ファッションお花など、栗原さんの好きなものを、それもリアルにいろいろ盛り込めたので、結果的にとてもよかったと思います。これからも雑誌でいろいろな挑戦をしたい、とおっしゃっていますよね。

栗原 今は韓国語と英語、刺繍で、新しくギターも始めました。

片岡 栗原さんとお会いするたびに、「いつも努力している方だなあ」と驚かされます。しかもどんなときも自然体で、とてもナチュラル。ノーメイクなのに肌もツヤツヤで、まさにテレビなどで見る“栗原はるみ”そのままなんですよ。

栗原 そう? でも、変えようがないから(笑)。

片岡 それと、いつも前向きで楽しそうなのが素敵です。人生の先輩である栗原さんをみていると、歳を重ねるのが怖くなくなります。


読者の想像力や考える楽しみを奪ってはいけない

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片岡 本を作っていて「さすがだな」「すごいな」と思うことが多々あったんですが、一番印象に残っているのが、付録である「料理が楽しくなる、特製ラベルシール」についてお話をしていたときのこと。
私たち編集者はどうしても、カラフルで目を引く色を使いたくなるんですよ。仕上がりが可愛いから。でも栗原さんは「そんな色を使ったら、中に入っているお料理が美味しそうに見えないでしょ」っておっしゃって。

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栗原 ラベルシールは実際に私が使いたいものを、ということで作りました。例えば甘酢を入れた瓶に酢や砂糖などの分量を書き込んだシールを貼っておくことがあるのですが、それにぴったりの大きさのシールもあります。

片岡 シールそのものしか見ていない私と違って、それを使う読者のことや、料理が入った状態までちゃんと見えている。20万部の雑誌を作り続けてきた栗原さんの視点だなあ、と感銘を受けました。

栗原 最終的に紺とオレンジの2色が残ったんだけど、結局、紺だけになったのよね。

片岡 栗原さんが「私はオレンジは使わない」っておっしゃったから、最終的に紺だけでいこうと。

栗原 もちろん、可愛いデザインで作りたい、という考えは間違っていないんです。でも私の雑誌である以上、私には自分を発信していく責任がある。そのうえで、私の想いに賛同して、好きになってくれる方がいたら嬉しい、と思っています。だから、小細工はしたくないんです。

片岡 私自身、目から鱗だったんですが、「説明しすぎない」ことにもすごくこだわられていますよね。私たち編集者は、何かと説明を入れたがるんですよ。わかりやすい見出しを入れたり、料理のプロセスカットをたくさん載せたり、文章で事細かに解説したり……。でもそういう説明はいらない、と何度もおっしゃっていましたね。

栗原 丁寧に説明しすぎることで、主婦の楽しみを奪っちゃダメなのよ。想像力を奪ってしまうことにもなるから。

片岡 確かに説明しすぎることで、読む人が自分の頭で考えなくなってしまいますよね。お料理って、基本的な作り方は押さえておいて、あとは自分の好きな味にアレンジすればいいので、この雑誌では栗原さんの提案をきっかけに、自分流に楽しむことを伝えられたら、と思っています。

栗原 そうそう。答えは私たちではなく、読んでいる人が出せばいいんです。

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片岡 創刊号のもうひとつの付録「わたしがつくる、キッチンノート」も、栗原家の食卓が再現できる簡単なレシピが載ったノートなんですが、自分のレシピやメモなどを自由に書き込めるよう、あえて真っ白のページを10ページつけました。余白に自分の好きなレシピを書き込んで、世界で一つだけの自分のノートにしてほしい、と思ったんですよね。そうやって読者と一緒に、栗原さんの生活を体感できる雑誌にしていきたいです。

【写真】新雑誌『栗原はるみ』の中身を一部公開!
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