診療報酬の比較

「これって更年期障害...?」スムーズな診断のため、患者にできること【医師に伝えるべきポイントリスト】_img1
 

じつはこの状況は、患者が伺い知れない診療報酬の仕組みも遠因になっています。

「一般外来では患者さんと話す時間に応じた診療報酬はつきません。つまり、産婦人科や女性泌尿器科などの女性外来の場合は、同じ時間話しても診療報酬に加算はないのです。多忙な医師を長時間拘束することは、他の患者への負担が生じ、医療機関として経営が成りたたなくケースも。日本の保険診療を維持していくためには、医師も患者も最大15分程度で問診は終了するという努力が必要かもしれません」

 


更年期とは関係ない症状の場合


「更年期障害は『除外診断』といって、他の病気がないかを確認した上で、最終的につけるべき診断です。まず、更年期症状に対する、女性ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬、エクオールのようなサプリメント等で、状態や希望に治療を行います。これらで改善傾向がみられなければ、他の病気が隠れている可能性を調べていきます。

なかでも甲状腺の病気は女性の発症頻度が高く、更年期症状の不定愁訴とオーバーラップするため、不調の背景に潜んでいる病気の筆頭です。他には、例えば胸の痛みの訴えなら胃カメラ検査や心電図、下腹部痛ならば腹部超音波・尿・血液などの検査で、病気を診断していきますが、それでも不明確ならば専門医をご紹介しています。

様々な検査でも異常値がでないケースでは、脳の問題が絡む慢性疼痛・知覚過敏や自律神経失調症などがあり、少しでも痛みを取り除く治療方法を一緒に考えながら、満足度を毎回確認し、行っていきます」

病気の原因は単純ではなく、複数重なっている複雑な場合があるのです。


自分の健康を守るために女性ができること


「私の女性専門外来には、いろいろな病院に行ったけど、原因がわからないという女性が多く訪れます。女性専門外来でなくても、病院に行く時に、ご自身のために、5W1Hで簡潔に書き留めたメモを持って行くのはおすすめです。

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他院での検査データとお薬手帳も一緒に持参していただくと、似たような検査を短期間に何度も受けて、似たような薬を処方されないポイントです。簡潔にポイントを押さえたプレゼンテーションが、ご自信の負担を減らすことにつながります

女性は時間もお金も家族を優先して、自分のことは後回しにしがち。更年期世代の女性はホルモンバランスの変化に加え、親の介護、子どもの問題、仕事の悩みなどが重なり、心身のバランスを崩して、持病が悪化するケースもあります。辛い症状がある時は我慢しないで、早めに医療機関へ足を運んでいただきたいです」
 

安心できるかかりつけ医をみつけるコツは?


私の場合は、大病をしたのがきっかけで信頼できるかかりつけ医に出会いました。定期的に検診を受けるようになり、早期診断・早期治療に圧倒的につながりやすくなりました! 参考までに、関口先生にかかりつけ医をみつけるポイントを伺います。

「お付き合いするパートナーを見つけるのと同じようなものと考えてください。ホームページなどをみて良さそうと思ったら、実際医師に会ってみること。そこで、ご自分が納得できず、信頼できなければ次にいくべきです。

私は、長年女性医療に携わってきた経験で、初診でも15分あれば問診で更年期障害がそうでないかの判断はつきます。診断では現状をお伝えして、治療の選択肢をいくつかご提示しますが、最終的には患者さんご自身の決断を優先します。また治らないケースについて、最初にはっきりお伝えすることもあります。患者さんの微妙な表情をとらえながら説明方法を変えますが、当然私と合わない方もいらっしゃいます。相性がありますので、3件くらいはクリニックを受診したほうがよいとお勧めしています。

常に最新医療情報は変化しますので、その先生に言われたからずっと継続ではなく、気になることはご自身で情報をアップデートし、信頼できる医師とつながっていってほしいと思います」

自分を守るのは、まず自分であると心得る。病院や医者任せではなく、自分で情報を集め、体調の異変をメモしておく。そんなちょっとした工夫が、外来で医師から適切な診断を受け、効果的な治療を受けることにつながります。


更年期世代、いざという時に備えて予備知識を。
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関口 由紀先生 女性医療クリニックLUNAグループ理事長

日本では数少ない女性泌尿器科専門医である。医学博士、横浜市立大学医学部泌尿器病態学講座客員教授。日本泌尿機能学会指導医・専門医。日本東洋医学会指導医・専門医。日本性機能学会専門医。日本排尿機能学会専門医。経営学修士(MBA)。「女性の身体は、全身的に診ていく必要がある」と、婦人科、女性泌尿器科、女性内科、漢方内科、乳腺科、皮膚科、美容皮膚科、などを揃えた女性医療クリニックLUNAグループを主宰。「自分の体は、自分で守る」の理念の元、女性の生き方に関して「YouTubeるなクリニックch」で配信中。


構成/佐野倫子
取材・文/熊本美加
 

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