そんな傾向にあっても、政府は近い将来の認知症社会を見据え成年後見制度の促進を掲げています。
2019年(令和元年)に定められた「認知症施策推進大綱」というものがあります。これは、認知症に対する施策について、政府全体の方針を定めたものです。その中では、はっきりと成年後見制度の促進が掲げられているのです。
まったく評判がよくないものをさらに進めようとしているこの矛盾。これでは、一般市民の混乱はますます深まるばかりです。
「え、あなた誰?」赤の他人が財産管理。子どもが後見人になれないことも
成年後見制度の不信の1つ。それは、子どもを始めとする親族自らが希望通りに成年後見人になれないことにあります。
成年後見人は、家庭裁判所によって選ばれます。ところが近年、家庭裁判所は、親族を選任しない傾向が強くなっています。
その傾向は、統計からも一目瞭然です。今や何と8割以上が親族以外から選任されています。最高裁判所事務総局家庭局の発表によると、2020年(令和2年)において、関係別件数(合計)のうち、親族が7242人で19.7%、親族以外が29522人で80.3%となっています。ちなみに、親族以外とは、司法書士、弁護士、社会福祉士などの専門職、市区町村等が実施する養成研修を受けるなどした一般市民の方となっています。
もちろん、親族が選ばれているケースもありますので、可能性はゼロではありません。しかし圧倒的に第三者が選任されている現状があります。
少なくとも“自分が成年後見人になれる”と安易に思い込むのはやめた方がよいでしょう。
もっとも当初からそうだったわけではありません。成年後見制度開始当時のデータを見ると、専門職の割合は全体のわずか8%ほどです。制度がスタートした当初は、あくまで親族がメインだったことが分かります。基本的に親族を成年後見人に選任し、対応できる親族がいない場合に専門職を当てるスタンスでした。
成年後見人等と本人との関係について
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出典:最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況 令和2年1月〜12月
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