アメリカでも判断ミスはよく起きている

 

廣川さんは児童保護に関する日米のさらなる違いとして「官民連携」を挙げています。連携が進んでいるアメリカでは、「チャイルドヘルプ」のようなNPOを軸に、刑事やFBI捜査官、検事、医師、看護師、児童保護員、社会福祉士、心理療法士、そしてセラピー犬などが一丸となって児童保護に取り組んでいました。

 

「ここでは、みなが一つになっている。すべては、一人の児童の『擁護』のために。どんな立場であれ、目指すところは同じ。だからプロフェッショナルたちは、垣根を越えて集結した」

廣川さんは、アメリカに比べて官民連携が弱い日本では児童相談所が何度も介入しても子供が死んでしまう例があることを児童相談員に伝えます。しかし、その相談員が口にしたのは意外な言葉でした。

「それは、アメリカでもよくあることです。とてもよくあるケースです。保護現場での判断ミス。家に帰しては危険なのに再び帰してしまった。そのような判断ミスは、アメリカでも本当によくあるのです」

あらゆる分野の専門家がそろっているのになぜ悲劇が起きてしまうのか? 相談員は自らの見解を述べるのでした。

「誰も子供を親から離したくないのよ。誰だって親子は一緒に幸せになってほしいと願っている。だからきっと、日本の児童相談所もそういった判断になったのでしょう。本当に、保護判断というのはむずかしいものなのよ」