熊本さんに対する医師の診断は「高次脳機能障害」というものでした。心疾患や脳梗塞、事故などで脳が損傷を受けたことで引き起こされる認知障害全般を指します。疲れやすい、コミュニケーションがうまくいかない、感情のコントロールができないなど、症状は脳の損傷した場所や範囲によって異なります。本人が自覚しにくく、また周囲にも理解されにくい難しい障害なのです。

その後、熊本さんは一般病棟へ。他の患者さんたちの一緒の病室は、日中は穏やかに時間が過ぎていきます。しかし夜になると、その様子は一変。阿鼻叫喚の現場と化すのでした……。

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「この生活がいつまで続くんだろう……」。毎夜繰り返される阿鼻叫喚に、我が家への想いを募らせていた熊本さん。始まったばかりの闘病生活は、ここで新たな局面を迎えようとしていました。


「ストレスだからそのうち収まる」は危険!


熊本さんが「単なるストレス」と放置してしまった、心肺停止2週間前の胸の痛み。普段の私たちも、ストレスや悩みを抱えている時に身体の不調が出ると「今のストレスが解消すれば治るだろう」と考えがちですよね。本書の監修を務めた鈴木先生は「ストレスと胸が痛いなどの症状は、本来は分けて考えなければならない」と警告します。

「ストレスが健康を害する要因であることは間違いありませんが、ストレスが原因で症状が出ていたら、それには必ず治療で対処しなければなりません。ストレスが原因だから放置していいだろう、というのは間違い。ストレスがなくなったからといって、その症状がなくなるかは誰もわからないからです。

ちなみに熊本さんの症状でいえば、本来、ストレスを感じても胸が痛くなることはありません。痛くなるとしても一瞬か数秒。数分、十数分と続く場合は、一般的には違う病気です。皆さん、ストレスを病気の原因として乱用しすぎる。痛みの症状が出ている時点で、自然治癒するレベルではないということは忘れないでください」

 

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『山手線で心肺停止! アラフィフ医療ライターが伝える予兆から社会復帰までのすべて』
熊本美加・著 上野りゅうじん・漫画 鈴木健之・監修 1320円 講談社

毎年の健康診断では「問題なし」だったアラフィフの医療ライターが、ある朝、山手線で心肺停止に。予兆はなかったのか? その時、生死を分けたものとは? その後、高次脳機能障害となるもリハビリを経て仕事復帰するまでをまとめた「蘇りルポ」をコミック化。主治医の監修付きで実用書籍にしました。自分と大切な人のために、読んでおきたい一冊です。



熊本 美加
東京生まれ・札幌育ち。医療ライター、性の健康カウンセラー。大学卒業後、広告制作会社などを経てフリーライターに。更年期ウイメンズ&メンズヘルス、性感染症予防・啓発、性の健康についての記事を執筆。2019年に電車内で心肺停止で倒れ救急搬送され蘇る体験以後、救命救急、高次脳機能障害、リハビリについても情報発信中。



上野りゅうじん
2017年「うちのへそ曲がり!!」でデビュー。ママスタセレクト漫画・記事挿絵などを担当。『オカン DAYS』(講談社)、『ママのうつ病をなめてたら死にそうになりました』(ぶんか社)が発売中。漫画で参加した『マンガでわかるポイント投資 100ポイントあったら「株」を買いなさい!』(安恒理著、講談社)、『女はいつまで女ですか? 莉子の結論』(KADOKAWA)がある。


漫画/上野りゅうじん
構成/山崎 恵

 

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第1回「山手線で心肺停止!50代医療ライターが見逃した2週間前の予兆「毎日同じ時間に、同じ場所が」」>>

第2回「山手線で心肺停止!救急隊到着までの20分、私の命を繋いだもの「下がるのは“蘇生率”だけじゃなかった」」>>

第3回「「ワシは面倒見れん」「お姑さんの介護が...」昏睡状態の50代女性の横で始まった家族会議が超シビアだった話」>>

 
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