ファッションスタイリスト佐藤佳菜子さんが日常のおしゃれについてのアイデアや思いを綴る連載です。

 


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子供の頃から目が良くて、どちらかといえば遠視気味だったのかもしれないけれども、常に2.0に近い視力とともに生きてきた。視界は、スーパークリスタルクリア。見えないものなど何もない。

去年の花粉症の時期くらいに、仕事中にジュエリーの裏に刻まれている刻印を見ようとしたら、目がかゆくてよく見えない。そうだ、目薬をもらいに眼科に行っていなかったと思いたって、眼科に行ってみたら、なんとすこし老眼が始まっていた。花粉で目がビシャビシャしているから見えなかったのではなくて、近くに焦点を合わせづらくなっていた。

一度も見えない経験がなかったので、目が見えないということがどういうことなのかわからずに、まさかこれが世に言う、「目が悪い」ということなのだと気がつかなかった。眼科の女医さんはわたしよりももっとずっと先輩だったのだが、彼女も若い頃は目が良かったので、すごく早く老眼が始まったのだと言った。

「いままで見えていたのが、よく見えないってもう不快、なんか不快よね」

まさにそう。見えないことがじれったい。さっそく勧められた度数でメガネをかけたら、あらよく見えること。メガネの有効性に齢40にして気がついたのだ。なにしろ、メガネをかける習慣がなかったので、最初はものは試しと手頃で少しファンキーなメガネを買って老眼鏡にした。でも、それは太いフレームでかわいいのだか、長い時間かけていると重くて顔が疲れる。

そんなこともすっかり忘れていた頃、すごく気に入ったサングラスを見つけた。鼻のうえにしっかり乗っておさまりが良くて、しかも軽い。フレームもとても好きな形だった。サングラスを買ってからしばらくして、もしかして、このフレームでメガネを作ったらどうかと思いついた。そして、すぐにメガネもやってきて、サングラスと老眼鏡は双子になった。

スタイリスト金子綾ちゃんのコラボモデルです。メガネサングラス/グラッサージュ+a. [AYA KANEKO]
 
 

昔、ロンドンに住んでいた頃、素敵なマダムがとてもユニークな老眼鏡をかけていたので、そのメガネはどこのですかと聞いたら、これは元々はサングラスだったけれど、レンズだけ老眼鏡に変えたのよと言っていたのを思い出した。老眼鏡となると一気にシリアスな雰囲気になるけれど、別にサングラスを選ぶ感覚で遊び半分で選んだって問題ない。しかも一日中かけているわけでもないので、ちょっとポップなぐらいでもむしろいい。人生で初めてのメガネ生活は、気に入ったフレームを見つけたことで突然楽しくなった。老いとの向き合い方は人それぞれだと思うけれど、新しいことに出会う喜びだってあるのだと思えば悪くない。もう少し年をとったら、また違うメガネが似合うようになっているかもしれないし、まだまだかけてみたいメガネもたくさんある。未だ見ぬ新しいメガネに想いを馳せながら、今週はお開きにしたいと思います。

カットソー/ヤヌーク スカート/ヴェルメイユ パー イエナ バッグ/ディオール

ちなみに、この日の格好はこちらでした。うちの中ではカーテンという不名誉なあだ名で呼ばれているスカート。ピグミは今日も全裸ですが、恥ずかしそうなそぶりはありません。来週もよかったら、遊びにきてください。


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バナー画像撮影/川﨑一貴(MOUSTACHE)
文/佐藤佳菜子
構成/高橋香奈子
 


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