リフィル処方箋とは


里子さんの同僚の方が教えてくださったのは、2022年度の診療報酬改定で新たに登場した「リフィル処方箋」と呼ばれる制度です。これまで薬の処方箋は、受診のたびに発行してもらい、処方箋1枚につき1回しか薬を受け取れませんでした。ところがリフィル処方箋は、1度発行してもらった処方箋で、診察を受けなくても最大3回まで薬を受け取れます(医師の定めた期間内に限る)。里子さんのご家族のように「いつものお薬」を出してもらうためにわざわざ病院を受診しなくても、特定の条件を満たせば3回までは薬を出してもらえるありがたい制度なのです。

欧米では広く活用されている制度で、日本でも10年以上前から導入についての検討がなされてきました。今回の導入により、医療費約470億円の節減効果が見込まれ、医療の質の向上にもつながると言われています。

なお、日本には2016年から「分割調剤」という制度が導入されています。こちらも似たように「医師の指示により最大3回に分けて調剤を行う制度」ですが、「長期保存が難しい薬剤」や「ジェネリック医薬品を初めて服用する場合」など、リフィル処方箋とは目的が少し異なります。
 

リフィル処方箋は誰が利用できる?


では、リフィル処方箋は誰もが利用できる制度なのでしょうか。国はリフィル処方箋の利用条件として「症状が安定している患者で、医師の処方により医師および薬剤師の適切な連携のもと、一定期間内に処方箋を反復利用できること」と定めています。

 


どんな薬が対象?


リフィル処方箋では、利用できる薬の種類にも制限があり、投薬量に限度が定められている医薬品および湿布薬には使えません。具体的には、がんなどの痛み止めに使用される麻薬類や睡眠導入剤、抗うつ剤のような向精神薬、新薬、湿布などには使えないことになっています。
 

リフィル処方箋における4つの留意点


ここで改めてリフィル処方箋における留意点を紹介します。

留意点① リフィル処方箋の投薬期間と総投薬期間は、患者の病状等を踏まえ、医師の判断で「個別に医学的に適切と判断した期間」とする。

留意点② 繰り返し利用は最大3回まで。

留意点③ 薬を受け取れる期間は、初回は発行日を含めて4日間。2回目以降は、薬剤師が初回時に決める「次回調剤予定日」の前後7日以内(調剤予定日を挟んで2週間が受け取り可能日)。7日を過ぎても薬局に取りに行かなかった場合、「薬剤師は電話等により調剤の状況を確認すること」との規定があるため、薬局から連絡が入る。

留意点④ 処方箋の管理は患者が行い、紛失したら再発行できない。

4月にスタートした「時間もお金もお得な薬のもらい方」【リフィル処方箋を徹底解説】_img1

 

お金も時間も節約できるリフィル処方箋


医師が薬を処方する診療報酬は「処方箋料」と呼ばれ、1回68点(680円)がかかります。診察料にはその処方箋料と初・再診料のほか諸々の加算が入るため、3割負担の人であれば年間に換算すると結構な金額になってしまいます。リフィル処方を使って3回分の薬が一度にもらえるのであれば、診察にかかるお金はもちろん、通院時の交通費の節約にもなるでしょう。また、通院回数が減ることによって時間的にも余裕が生まれます。
 

リフィル処方箋のリスクとは?


これまで導入のメリットを中心に述べてきましたが、医師による経過観察の機会が減ることで、当然ながら病状の変化を把握しにくくなるというリスクもあります。実際「病状悪化を助長する」という医師側からの意見もあり、今回の相談者・里子さんのお父さんのように、すべての医療機関・調剤薬局がリフィル処方箋を導入しているわけではありません。患者が希望しても、医師が適切でないと判断すればリフィル処方箋は利用できませんので、ご自身が「該当するのでは?」と思ったら、一度かかりつけ医に確認してみてください。
 

 

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※初掲時、記事中の地名表記に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。


写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 

4月にスタートした「時間もお金もお得な薬のもらい方」【リフィル処方箋を徹底解説】_img3
 


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