気分を左右する、入院ファッション


そんなこんなで日々は過ぎ、季節は秋。10月に入り、病室内も少しずつ肌寒くなってきました。もちろん空調は効いていますが、窓の隙間から冷気がしのびよってきます。

右手と右脚が自由に動かない私は、着替えるのもひと苦労。基本的にTシャツやカットソー、スウェットや短パンなどで過ごし、これらの服が、あるときはパジャマ、あるときは普段着、そしてリハビリウェアにもなっていました。

急性期病院ではぼーっとするし現実に適応しきれていないし、正直着るものなどに気を配ってはいられませんでした。でも、転院当日にレンタルパジャマから自分の服に着替えたときに、とても幸せを感じた私。

着るものって、本当に大事! 

実際、リハビリ病院で長期入院している患者をみても、レンタルパジャマを着ていると、体の調子にかかわらずより病人っぽく見えてしまいがち。いつもレンタルパジャマだった人が、ある日から自分のTシャツを着るようになったところ、なんだか機嫌良く、元気そうに見えたから不思議です。

病棟内にはコインランドリーがあって、それを利用している人も多くいました。私はというと、週に1〜2度、夫か母が洗濯ものを引き取りがてら新しいものを持ってきてくれるので、それに甘えていました。運が良ければ、このとき子どもたちにも会えるのでした(何度も言いますが、本当はダメです)。

この「お荷物交換の日」は、ちょっとしたイベント。「長袖は入ってるかしら」「おいしいガムは入れてくれたかな?」と、ワクワクしながら荷物を開けます。

頼んであった新刊の文庫、ペットボトルオープナー(必須)、お水、ガム、乳液とここまでは順調。あれ、このTシャツ私のじゃない! この靴下にいたっては、息子のではないか。あんなに頼んだ、きれいな色のカットソーがない……。えっ。なんで、娘のパンツが入ってるの?

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ユニクロのスウェット(まくりあげバージョン)と夫の謎Tシャツを着てくつろぐの図。足元は、右は装具用のビッグスニーカー、左は入院時にはいていたナイキのスニーカーをそのまま採用。

考えてみれば、私のタンスなんて、結婚前も後も夫は開けたことがないでしょう。冷静に考えれば、望むものが当たり前のように届けられるわけはありません(悲)。

 

夫の「エビアン」のロゴをもじった海老のイラストつき「EBISAN」や、「ホンダ」かと思いきや「HONDE(『それでを意味する関西弁』の説明つき)」Tシャツを着て、今日もリハビリに勤しむ私。

早く、次の荷物が届かないかなあ、と熱望するのでした。
 


>>次回は、入院中の食事や体重コントロールなどについてレポートします。
 


文/萩原はるな
写真/萩原はるな、Shutterstock
構成/宮島麻衣
 

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