火災保険詐欺の手口とは


美奈子さんのご両親のように、住宅修理に関して「保険が使える」と言って勧誘する業者とのトラブルが増加しています。電話や自宅へ訪問して「保険会社から委託されているので安心して。自己負担ゼロです」と言ったり、2、3年前の台風や地震を引き合いに「時効になる前に調査をした方がいいですよ」と言うなど、さまざまな方向から持ち掛けてくるようです。

インターネット上では「火災保険請求手続きの代行を、支払われる保険料の30%でサポート。あなたの作業は不要です」といった広告を出している業者もいます。保険料の30%というと、仮に100万円の給付が下りれば30万円が代行業者に支払われるわけですが、そんなに高い代行手数料は考えられません。そもそも、火災保険の請求手続きは加入者自身が行うのが基本です。

今回のケースの場合、「修繕費用が保険会社から出る」という点はあながち間違っていませんが、「保険会社とのやり取りはすべて我々にお任せください」という点に関してはあり得ません。もし仮にその業者に修理を依頼するのであれば、正しい相場なのかをきちんと調べる必要があります。

 

「請求手続きは加入者自身が行う」が基本


先ほどもお伝えしたように、請求手続きは加入者自身が行うものです。請求する際は、加入している損害保険会社や損害保険代理店に電話をするか、ホームページから申請を行います。その後、請求に必要な書類が郵送されてくるというのが通常の流れです。

悪徳業者と安易に契約すると、ずさんな工事や高額な違約金を請求されかねません。そのため、すぐに契約せず、まずは加入先に相談してください。その際は、家の所有者か、難しいようであれば家族が代理で連絡を取りましょう。
 

「もともと壊れていた箇所」と「老朽化による損害」は対象外


美奈子さんのご実家のように、本当に台風の被害に遭っていれば問題ありませんが、中には老朽化による損害を自然災害と偽る、屋根や雨どいなどをわざと壊す、といった事例も散見されています。偽りの理由による保険金請求は、詐欺に該当する場合もあります。知らないうちに両親が詐欺に加担するような事態は何が何でも避けたいもの。

では、詐欺に遭ったらどのようにすれば良いのでしょうか。
 

詐欺の疑いがあれば8日以内に即行動!


詐欺に遭ってしまったら、それがクーリング・オフの対象かどうかを確認してください。ご存知の方も多いと思いますが、クーリング・オフは一度契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるようにし、一定期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除できる制度です。

クーリング・オフができる期間は内容によって8日間と20日間があり、期間内に必要な情報を記載して、販売会社、クレジットカード会社(利用した場合のみ)、買取業者(訪問購入の場合)に対して通知書を送ります。

 

クーリング・オフ期間は法定の契約書面を受領した日から起算されますが、美奈子さんのご両親のように契約書をまだもらっていない場合、カウントは開始していないことになります。

なお、クーリング・オフはこれまでハガキなどの書面によるやり取りのみでしたが、2022年6月以降はメールや専用フォームなどの電磁的記録でも行えるようになりました。詳細は国民生活センターのホームページでご確認ください。
 

詐欺被害に遭ったときに心強い2つの連絡先


クーリング・オフに関して不明点があれば、「国民生活センター」が開設する「消費者ホットライン」に連絡してみてください。住宅に関しては、国土交通大臣指定の「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」が運営する住宅専門の相談窓口「住まいるダイヤル」がお勧めです。

 


子世代が気にかけるべき「実家のメンテナンスと詐欺予防」


マンションであれば管理会社任せの部分も多いですが、戸建のメンテナンスは当然自分たちでやらなくてはいけません。住宅修理やメンテナンスにおいては、自宅を建ててくれた工務店、近所の信頼できる工務店を見つけておくことも大切です。

また、マンションとは違い、戸建は各家庭でメンテナンス時期を計画する必要もあります。屋根は10〜20年での点検が目安ですが、今回相談に訪れた美奈子さんのご両親は屋根に関しては無頓着でした。

定期的なメンテナンスについては予算の問題もありますが、被害が大きくなる前に子世代にも気にかけてもらえると安心です。また、大きな台風や地震のあとは特に今回のような被害が発生しやすいため、事前にご両親に契約しないように伝え、先手を打つことも大切です。
 

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写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 

 


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