公的老人ホームの種類と特徴


老人ホームには、地方自治体や社会福祉法人、医療法人などが運営する「公的施設」と民間企業が運営する「民間施設」の2種類があると冒頭で紹介しましたが、公的機関が運営する老人ホームは入居者の介護度や認知症の有無などによって「①特別養護老人ホーム(特養)」「②介護老人保健施設(老健)」「③介護医療院(介護療養型医療施設)」「④ケアハウス(軽費老人ホーム)」の4種類に分けられています。この4つは名称が似ているのでややこしいですが、主に以下のような特徴があります。

 

今回麻子さんが旦那さんのご友人に勧められたのは、①の特別養護老人ホーム(特養)の中の1つです。特養は基本的に要介護度3以上(特例の場合は要介護1、2も可能)の高齢者が入居し、終身の介護を受けることができます。公的施設なので民間の有料老人ホームに比べて費用が安く、経済的に余裕のない方でも入居が可能です。

その特養の中にもさらに種類があり、「①広域型特養」「②地域密着型特養」「③地域サポート型特養」の3タイプに分けられているのをご存知でしょうか。違いを見ていきましょう。

 

①いわゆる特養「広域型特養」


定員が30名以上で、一般的に特養と呼ばれるのが「広域型特別養護老人ホーム」です。居住地に関わらずどこからでも申し込みが可能で、医師や看護師、介護支援専門員や機能訓練指導員などが必ず配置されています。厚生労働省の発表によると、広域型特養は2020年10月時点で全国に8306施設あります。
 

②定員29人以下の「地域密着型特養」


今回の相談者・麻子さんが勧められたのが、定員29人以下の小規模な「地域密着型特別養護老人ホーム」です。こちらは2006年に新設された地域密着型サービスの1つで、制度創設以来数を増やし続け、2020年10月時点で全国2413施設になりました。基本的にはその地域に住んでいる人しか入居できないのが特徴で、人員基準を緩和した「サテライト型」とアットホームな「単独型」の2つに分けられます。

■サテライト型:近隣にある広域型特養などを本体施設として運営していて、単独型に比べて数が多い

■単独型:本体施設がなく、小規模多機能介護やデイサービスを併設しているところが多い

地域密着型特養のメリットは、多くがユニット形式で介護を行うため、行き届いた介護が期待できる点です。ユニット形式とは、共有スペースのリビングを囲むように10室程度の居室が配置され、そのユニット(グループ)ごとに決まった介護スタッフがケアにあたる体制のこと。スウェーデンで生まれた方式で、2001年以降に開設された特養はユニット型が主流になってきています(従来型は個室と4人部屋が混在していました)。

民間企業が運営する「認知症高齢者グループホーム」は、9人以下を1つのグループ(ユニット)としていますが、この地域密着型特養も10人ほどを1つのグループとしているので、グループホームと近い環境が期待できます。特養と同じ価格帯でありながら、グループホームと同等のサービスが受けられるので、個人的にはお勧めです。※この2施設を比較する際、グループホームは認知症診断有が入居条件となるので要確認

 


③在宅介護者向けの「地域サポート型特養」


最後に、在宅介護生活をしている高齢者を対象に、24時間年中無休の見守り体制で支える特養が「地域サポート型特別養護老人ホーム」です。全国的に数が少なく、施設というよりは、特養が見守っているというイメージの方が近いかもしれません。
 

公的老人ホームと民間老人ホームのシェアはほぼ一緒?


前述したように、いわゆる特養は2020年10月時点で全国に8306施設あり、定員は57万6442人、85歳以上の入所者が6割を占めています。一方、厚生労働省が公表した「社会福祉施設等調査」によると、民間が運営する全国の都道府県、指定都市、中核市の有料老人ホーム数は15956施設で、定員は60万9472人(サービス付き高齢者向け住宅を除く)。特養は入居しづらいと言われていますが、定員数は有料老人ホームとさほど変わらない数となっています。

このように、老人ホームと言ってもさまざまな種類があるので、最初に「特養」「グループホーム」「有料老人ホーム」という大きなくくりで考えず、利用する地域にどのような施設があるのかということを、もう一段階掘り下げて調べてみてください。すると希望に合った施設が見つかることもあります。施設入居を考える際は、あらゆる角度から調べた上で検討してみてはいかがでしょうか。
 

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写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 

 


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