相手を思い通りにしようとするのは、友情じゃない


30代以降は、子育てでてんてこまいだったこともあり、他人がどんな服装だろうが気にならなくなりました。そもそも自分も身なりに構う余裕なんてなかったし、20代の頃よりも世間が広がって、色々な価値観の人に触れる機会が増えました。そして何より、人の見た目を全く気にしない二人の幼い息子たちのおかげで、相手の外見ではなく中身を見るようになりました。「この人と一緒にいたらどう見られるだろう?」ではなく、「この人はどんな人なんだろう?」に関心を持つようになったのです。

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以前、ある作家さんと表参道の洒落たカフェで待ち合わせたら、その人がミュータント タートルズのリュックを背負ってきました。中年男性が背負うのにはなかなか斬新なデザインでしたが、リュックも、嬉しそうにしているその人もすごく可愛い。その作家さんとは、代々木上原のこれまた洒落たカフェで、「いじわるばあさんかるた」をしたこともあります。いけてるファッション業界人やセレブ主婦がお茶してる中でのカルタ、めちゃくちゃ楽しかったです。かつての自分が見たら「なんでそんな風変わりな人と一緒にいるの? 周りの目が気にならないの?」と思うでしょうね。周りの目を気にしないで生きられるようになると面白いことがいっぱいあるんだよと、子どもだった自分に教えてあげたいです。

 

あの幼馴染の彼女は、推しキャラ好きの友人の服装の好みは以前から知っていたはずです。高級ホテルでの待ち合わせにそのスタイルで来られたら困ると思うのなら、待ち合わせ場所を変えればいいのです。もし友人に会うことが目的でなく高級ホテルのティールームをおしゃれに楽しむことが目的なら、一人で行くか、そこにふさわしい服装をしてくるであろう人を誘えばいいでしょう。相手に説教して思い通りにしようとするのは、友情でもなんでもない、ただの支配です。推しキャラ好きの彼女には「その幼馴染からは逃げて! 年齢なんて気にしないで、好きなものを好きと言えるあなたのままでいて」と心からのハグとエールを送りたいです。

 


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