ファッションスタイリスト佐藤佳菜子さんが日常に感じる思いを綴る連載です。

 


関連記事
【大人のZARA攻略法】スタイリスト佐藤佳菜子さんがこの秋狙うのは「冒険ワンピース」と「旬トップス」>>


ちょっとおひさしぶりになってしまいました。夏が想像以上にいそがしくて、てんてこ舞子になっていましたが、ようやくひと段落して、いま椅子に座ってこれを書いていることに心底安堵しています。みなさまはいかがお過ごしでしたか。

ふと気づくと、一日中働いていて、これではこのまま庶務に忙殺されたまま人生が終わってしまいそうだと発起しまして、最近フランス語の学校に通い始めました。なにか仕事以外のことをやってみたくて。それから、日々、働いていると常にアウトプットの連続なので、なにかをインプットしてみたくて。

つねづね、日本語と英語のほかに、もう一言語、この人生のうちに学びたいと思っていたのです。イギリスに住んでいたときに、親しくしていたマダムがフランス人で、よくフランス語を聞いていたのと、大学生のときに勉強をしたこともあいまって、話せるようになる可能性が一番高いのがフランス語なのではないかと、大きくでたわけです。

学生のときは、語学がとくに得意だったわけではないのですが、大人になってから、英語を勉強したとき、昔とはまったく違う視点で「学習」を捉えられる自分に気がつきました。ようするに、社会人として習得した知恵とか仕事の効率的なやり方、そして、働く中で自然と身についていた忍耐力などを使って勉強をしてみると、昔よりはるかに時間がない中でも、言葉を覚えられることがわかったのです。そんなこんなで、わたしの英語は30過ぎてから身につきました。それで、つまり味をしめたということです。新しいことの習得には、脳細胞の若さとかは、さほど関係がない。大切なのはやり方と取り組む姿勢。

流暢に話せるようになるには、きっと何年もの時間を要するでしょうけれど、これは100%あそび。新しい関心事の発掘は、人生100年時代への備えでもあります。いちばんの趣味が仕事になってから、もう何年もわたしはシンプルに他の物事への興味を失っていました。好きなことでお金がもらえるのは、もちろん幸せすぎる人生です。ただ、趣味と実益を兼ねるこの仕事に一点集中しすぎていて、頭が噴火するまえに、もうひとつなにか好きなことを見つけたかった。

若い女の子のフランス人の先生の名前は「スリ」。
「スリ、もう一度その言葉発音してほしい」
「スリ、これどうやって言うの?」

先生に質問をするということ自体が、中年の日常生活のなかでは自然発生しない。それだけでもう、人生の刺激だ。

余談ですが、今わたしのところにいるアシスタントは22歳で、わたしは彼女のお母さんと2歳しか違わない。もはや母親のような存在だ。それくらい世代の違う若者がそばにいると、つねにあたらしい価値観がもたらされる。ただ彼らがそこにいるだけで、こちらの固定概念を刺激してくるのだ。中年同士でいると触れることのない文化にも気がつく。これがすっかり気に入ってしまっている。若者はいい。この間、買ったばかりのジンバルという動画を撮る棒? のようなメカも、すぐに使いこなしていた。ちょっと、話が逸れました。すみません。

そんなこんなで、年を重ねて、できるようになったことはたくさんあるけれど、きっと、それよりもできないこと、知らないことに焦点を当てて探し続けられたら、きっと飽きずに暮らしていける気がする。しつこいですが、人生100年時代への備えです。

江戸時代の平均寿命は32歳から44歳だと聞いたことがあります。それでいえば、わたしなんてよくて後期高齢者。ともすると、草葉の陰の身。これでは、15歳で成人しないとたしかに時間が足りない。現代は、その倍以上生きるなんて、なんか人生が長すぎませんか。わたしはせっかちだし、100年なんていりません。そこそこなところで、人生を終えられるように、そこそこ不摂生をするべきなのか、うっかり長生きをしてしまう可能性にかけて、せめて満足な体で最後まで動けるように、健康に取り計らった方がいいのか、悩むところです。へんな悩み。人生のパラドックス。

ひさしぶりに文章を書いたのに、ファッションの話の方に筆が進まずすみません。せめてもの罪滅ぼしに、最近発見したとんでもなく素敵なネイルカラーをご紹介します。ジュエリーブランドのアルティーダ ウードから新しく発売になったヴィーガンネイル。まず、ジュエリー屋さんが、手元を飾るものの一環としてネイルカラーもプロデュースするというアイデアが好き。トータルで魅せる。ジュエリーを突き詰めたらネイルもやりたいとなる気持ち、わかる気がします。

ネイル/アルティーダ ウード

かわいいなぁ、と見ていたのですが、塗ってみたらこれがとんでもないネイルだった。まず、乾くのが早い。そして、驚いてしまったのが、なんと3日経ってもひと欠けもしていない。なにそれ。いままでそんなことありましたか? 塗ったその日には、もうどこかがかけてくるのが、肉体労働者の指先の常。それが、3日経っても人様に自信を持ってお見せできる美しさ。今、わたしのネイルはいちばん右の完璧な枝豆カラーでございます。

そして、足にはいちばん左のラメのブラウンを塗ったのですが、ライトなブロンズラメが色黒の足に溶け込んで、なじみ過ぎず、目立ち過ぎずのこれまたいい塩梅で、一生フットネイルはこれでいいのではないかと思うほど気に入ってしまった。このおしゃれカラーに加えて、機能としても単純に優れているものだから、もう、賞賛の嵐(わたしが一人でですけども)。


そんなこんなで、毎日、まぁなんとか生きています。みなさまの日々の暮らしはどんなですか。

 

そして、先日、タヌキに加えてあたらしくアライグマのラスカルがうちにやってきたことも付け加えておきます。終わりそうで終わらない連載。ラスカルの特徴はシマシマのしっぽです。そのうち、象とかもこないかな。

 
 


スタイリスト佐藤佳菜子さんの最新コーデ
▼右にスワイプしてください▼


バナー画像撮影/川﨑一貴(MOUSTACHE)
文/佐藤佳菜子
構成/高橋香奈子
 


前回記事「仕事の繁忙期。帰宅してからの癒しは、なんと野生動物?」はこちら>>