全身から溢れ出るチャーミングな魅力は、一世を風靡した『あまちゃん』の頃からまるで変わらない、のんさん。最新主演映画『天間荘の三姉妹』が、10月28日より全国で公開されます。映画に託した想いを伺うと、お話からは芯の強さや表現への渇望が感じられました。
いっつも怒っている自分、気に入ってます
『天間荘の三姉妹』の「天間荘」とは、天界と地上の間、三ツ瀬にある老舗旅館。肉体的な死が訪れた魂が、天界に旅立つ前に疲れを癒やし、肉体に戻るかどうか決めることができます。のんさんが演じたのは、交通事故に遭い、天間荘に連れられてきて、異母姉と共に働く小川たまえ役です。
――完成した映画を観て、どんなことを感じましたか?
今、生きている人の気持ちに寄り添って、想像を働かせることはあるけど、亡くなった人も遺してきた人を大切に思ってくれていて、お互いの想いは通じ合えることを、映画という形で見ることができて、すごくいいなと思いました。大切な人を亡くすことは、とてつもない悲しみです。でも、亡くなった方も自分のことを大切に思ってくれているんだって感じられたら、生きることに前向きになれ、止まっていた時間も動き出すんじゃないかなって。
原作では、東北の震災が描かれています。突然、命を奪われる災害では、魂も自分が死んだことに気づけないから、癒やす場所が必要だという切り口がすごく興味深いですし、納得もしました。この作品が、東日本大震災だけでなく、熊本の震災や大雨で甚大な被害を受けた方々、そしてコロナもありますし、たくさんの方を応援できる映画になっていたら嬉しいです。
――どんなふうにたまえ役を深めていきましたか?
たまえちゃんは三ツ瀬では、家族ができ、居場所も見つかり、どんどん開放的になっていきます。でも、現世では必要とされずに生きてきたので、根本的に暗い部分を内在している人。その部分が垣間見える台詞を探しながら、役を解釈していきました。
漆器を洗うシーンで、女将に「塗り物をゴシゴシそんなに洗うんじゃない」って怒られて、たまえが「すみません! やっぱり私出ていきますね」って、謝るんですけど、私の解釈としては、たまえは内心カチンときてるんです。すっごいムカついてるんだけど、周りに気を遣って、本意ではないことをポロっと言っちゃう。そういうところは、自分にもあるなって。でも、私はたまえちゃんよりも、怒ることはカジュアルな感情だと思っていて、好きです。
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