心臓弁膜症とは
心臓弁膜症は、心臓の弁に障害が起き、本来の役割を果たせなくなってしまう病気です。放っておくと、心不全につながる可能性もある侮れない病気なのです。
主な症状は、動悸や息切れ、胸の痛みなど。加齢に伴う体の変化に似ていることから、今回の相談者・裕子さんのお母様のように、「年のせいかな?」という理由で見逃されがちです。また、コロナによって外出を控える人が増えたことで、体の異変を自覚しにくく、発見が遅れてしまう恐れも指摘されています。
心臓弁膜症の有病率は、年齢とともに上がる傾向にあります。日本では、65~74歳で約150万人、75歳以上では約235万人の潜在患者がいると推測されています。
心臓弁膜症の専門サイトでは、以下のような症状が1つでもあれば、早めに専門医に相談することを勧めています。
心臓弁膜症の治療方法は?
心臓弁膜症は、一度かかると自然に治ることはありません。状態によって、薬で症状を緩和して経過観察を行う保存的治療や手術治療(弁形成術、弁置換術、カテーテル治療)があります。
中等度以上で心臓の機能が保たれている場合は、現状維持のために薬物療法を行うことがあります。薬物療法は、心臓の負担を軽くすることで、心不全を起こしにくくする効果が期待されます。
重度の場合は外科的手術が行われます。弁の悪いところを修復する弁形成術や、弁そのものを人工弁へと取り替える弁置換術のほか、高齢で体力がない場合はカテーテルによる治療が考慮されることも。カテーテル治療は体への負担が少ないため、1週間後には歩いて退院できるケースも珍しくないそうです。
心臓弁膜症の早期発見には聴診がポイント
心臓弁膜症は、高齢になると誰もがかかりうる病気です。俳優の武田鉄矢さんも、心臓弁膜症の約4割を占める大動脈弁狭窄症と診断され、2011年に手術を受けました。
心臓弁膜症は加齢が要因となりうるため、予防が難しい病気です。また、病気の存在自体があまり知られていないため、周囲に話しても気づかれにくい病でもあります。
そこで心臓弁膜症の早期発見には、聴診が重要になってきます。それにも関わらず、エドワーズライフサイエンス株式会社が行なった「心臓の健康に関する意識調査」では、年に一度は聴診を受けているという高齢者はわずか27%でした。
国内における死因の第1位はがん、次いで心疾患となっており、そのうち約4割が心不全です。心不全に至るのは、心臓弁膜症が200万人、虚血性心疾患と心房細動(不整脈)がそれぞれ80万人で、心臓弁膜症は心不全の代表的な要因の1つとされているのです。
心臓弁膜症は、正しい診断を受けて的確に治療されれば、治すことのできる病気です。親の話を聞く中で、「もしかして……」と思ったら、すぐに病院で心音をチェックしてもらってください。心臓の音を聞くだけで異常の有無がすぐに分かるので、少しでも異変を感じる方は、循環器科か心臓血管外科を受診することをお勧めします。
心臓弁膜症のセルフチェックはこちら
▼右にスワイプしてください▼
写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子
前回記事「がんを患った父が最期を迎える場にしたい、病院と自宅の中間施設「ホスピス住宅」とは」>>
- 1
- 2
Comment