受け止めてしまう人もいるし、かわせる人もいる。いろんな見方ができる描き方だと思う


石田:このお母さんって、自分のこと「イヤなヤツ」と思ってないんですよね。それってよくあるパターンで。向こうが「イヤなヤツ」と思ってる気持ちがこっちに伝わってくるから、こっちからは向こうが「イヤなヤツ」に思える、っていう。だから敢えて「イヤなヤツ」として演じなくてもそれは伝わるかなって。

井上:えりさんが明るく演じていらしたから、「こんなお母さんだったらイヤだなあ」という「毒」を見せない悪気のないお母さん。そんなお母さんに対する夕子の感情を「分かる人」と「分からない人」もいると思います。夕子みたいに受け止める人もいれば、次女の様にかわせる人もいるだろうし。

石田:次女はお母さんへの対処の仕方が上手いですよね。私も長女で妹がいるけど、次女ってああなんですよね(笑)。でも、思いは複雑であっても、繋がりとしては母親と長女のほうが絶対に深いと思う。

(C)2022「わたしのお母さん」製作委員会

井上:母娘は近いからこそぶつかることもあるし、でも近いからこそ言えないこともある。

 

石田:あるある、絶対にある。

井上:「誰よりも近いのに誰よりも遠い」はこの作品のテーマのひとつで、娘とお母さんを描いてはいるんですが、母娘の関係性に限らず、夕子の様に気持ちを閉じ込めて、なんとなく生きづらさを感じている人にも見て欲しい。いろんな見方ができる作品だと思います。

石田:本当にそう思います。つまんないもんね、あまりにも分かりやすいと。