この仕事「面白くないですよ」って言うのが、えりさんらしいと思う


作品を通じてどんなことを得るもの、演じることの楽しさを尋ねると、「面白いことより、大変なことのほうが多い」という意外な答えが。十代から切れ目なくこの世界で活躍し続けるおふたりが、それでもこの仕事を続ける理由は意外なものでした。

石田:面白い……と思ったことはないですよ。大変。真央ちゃんは面白い?

井上:大変だし、しんどいし……のほうが多いですよね(笑)。

 

石田:映画とかで誰かの素晴らしい演技を見て、「ああいう演技してみたい」とか「もっと深い表現ができたら」とか思っていたら、なんかここまで続いちゃっていた、という感じですね。

 

井上:自分が感動できるものに「今やっていることが一番近いのかな」と思いながらやっている感覚ですね。

石田:出演映画がいい作品になっているのを見ると、「頑張ってよかった、報われた」とは思いますね。でもそういう頑張りは、たぶん自分しかわからないと思う。必ずしも感動的な場面じゃなかったりもするし。だけど「思っていることがちゃんとできている」と自己満足する、それは嬉しかったりするかな。

 

井上:「面白くないですよ」って言うのがえりさんらしいです。

石田:でも「仕事自体が楽しい」っていうのは、どの仕事でもそれほどないと思うんですよ。何かができあがった時に、この時こうだったとか、こう考えていたとか、思い出とともに残るものが……よかったりするのかなあ(笑)。この映画の脚本を読んだ時も、心がキュッとなって、いろいろと考えましたね。人生ってはかないものだなあ……って。
 

<映画紹介>
『わたしのお母さん』
ユーロスペースほか全国順次公開中

(C)2022「わたしのお母さん」製作委員会

三人姉弟の長女で、今は夫と二人で暮らす夕子は、明るく社交的な母・寛子に、幼い頃からなぜか苦手意識を抱いてきた。母と娘の間にいつのまにか生じていた小さな亀裂。思いがけず始まった同居生活を機に、距離を置いてきた母との間にできた溝の深さに気付かされる日々……。悪気はないのに相手を傷つけてしまう母と、いつも母の顔色を伺ってしまって本音を言えない娘。「普通の親子」の間にできた亀裂に目をこらし、家族だからこそ言葉にできない繊細な心情を描いた本作。母と娘それぞれの思い、そして長い時間のなかで積み重ねられた違和感の正体をていねいに描きだす。
近しい人とわかりあえない苦しさや、誰かと正面から向き合えない辛さは、現代を生きる誰もが持つ普遍的なテーマ。人と人はどうしたら理解しあえるのか。どうすれば自分の気持ちに正直に生きられるのか。本当の気持ちに蓋をして、生きづらさを抱えてきたひとりの女性が、葛藤を乗り越え、新たな一歩を踏み出すまでを描く感動作。

出演
井上真央 / 石田えり 
阿部純子 笠松将 / 橋本一郎 ぎぃ子 瑛蓮 深澤千有紀 丸山澪 / 大崎由利子 大島蓉子 / 宇野祥平

監督・脚本:杉田真一
2022年/日本/カラー/1.85:1/5.1ch/DCP/106分 



(井上さん)ドレス ¥63800/ディーゼル イヤーカフ ¥25300/ロロ 靴、タイツ/スタイリスト私物
(石田さん)ジャケット¥25300、ブラウス¥9680、パンツ¥16280/SOEJU

撮影/井上絵理子
ヘア&メイク/松本直子(井上さん)、
MARI(SPIELEN、石田さん)
スタイリスト/伊藤信子(井上さん)、
山田陽子(マージュ、石田さん)
取材・文/渥美志保
構成/坂口彩