2度の離婚、そして乳がんの発覚。女優の南果歩さんは、どんな波乱が起きようとも、美しく強く、人生を歩み続けてきました。

そんな南さんが10年以上続けていること、それは「絵本の読み聞かせ」活動です。この記事では、被災地での読み聞かせ活動から生まれた絵本『一生ぶんの だっこ』についてや、一人息子との関係、さらには息子夫婦と同居する現在のライフスタイルまで、女優南果歩の「いま」を探ります。

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南果歩さんが執筆した絵本「一生ぶんの だっこ」は、どのような経緯でできたのでしょうか。


被災地での読み聞かせ活動から絵本ができました


「絵本の読み聞かせをはじめたのは、2011年に遡ります。東日本大震災が起きて1ヵ月後、いてもたってもいられなかった私は、車に詰めるだけの食料と日用品をのせて、被災地へと走りました。

避難所には、まだ行方がわからない家族を探す方、発見されたご家族のご遺体の確認へ向かう方などで、騒然としていました。避難所で、たくさんの方と膝を突き合わせてお話しさせていただいたときに「ドラマに出てね」「いまはニュースばかりだけれど、本当はドラマが見たいの」と声をかけていただいたんです。

 

こんなに大変な状況にあっても、人は物語を欲するのだと知り、驚きました。また自分の仕事が、直接人の心に繫がっていることも、改めて感じることができました。もっと被災地の方々の役に立ちたい。そんな思いから、被災地の保育園や幼稚園、小児病院へ出向き、絵本の読み聞かせ活動をスタートさせました。

時が経ち、新型コロナウイルスが流行りはじめてからも、変わらずリモートでの読み聞かせ活動をしていました。しかし読み聞かせが映像に残るとなると、出版社の許可が下りず、読める絵本が少なくなってしまったんです。

そんなとき、ずっと昔に原稿用紙に綴った物語があったことを思い出しました。その文章を書き直し、絵のない絵本として読むことになったのが絵本「一生ぶんの だっこ」のはじまりです」

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被災地や小児病棟の子どもたちに、読み聞かせ活動を続けていた南果歩さん。「一生ぶんの だっこ」は、その活動のなかから生まれました。


子育ては一方通行でなくキャッチボールだった


「『一生ぶんの だっこ』では、子ぐまの<ぼく>が、さまざまな思いを経験するたびに、お母さんぐまにだっこしてもらいます。そして<ぼく>はまた、世界に立ち向かっていく。絵本のなかでは、母さんぐまが子ぐまに向かって、こんな言葉をかけます。

『かなしい ときは ないても いいんだよ。
おとこのこでも おんなのこでも かんけいないんだよ。』

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絵本「一生ぶんの だっこ」の1ページ。泣いている子ぐまを抱きしめるお母さんぐまの姿に、胸が熱くなります。

「じつはこの言葉は、息子が私に言った言葉なんです。シングルマザーになりたてのころ、仕事や家のローンの不安におそわれて、疲れ果ててしまい、息子との夕飯を食べながら泣いてしまったことがありました。

そんなとき、息子がこの言葉をかけてくれたんです。私が普段から『誰だって悲しいときは泣いていいんだよ』と息子に伝えてきた言葉でしたが、息子が自分なりに解釈して、私に言ってくれました。子育てって一方通行じゃなく、キャッチボールなんですね。この言葉はその後の人生の、何よりの励みになりました」

息子とみつけた丁度いい「同居」関係


「そんな息子も、あっという間に27歳(2022年12月現在)になりました。いまは息子夫婦と、義理の娘になった息子の妻と、3人で暮らしています。といっても、生活のリズムはばらばら。息子がお嫁さんと仲良くやっていってもらうことが一番なので、干渉せず、タイミングが合うときにご飯を一緒に食べたりしています。

うまくやるコツは、何でも知りたがらないようにすることでしょうか。息子や娘がしゃべりたいときにしゃべれるように、適度な距離を保っています。といっても気をつかいすぎず、お互い自由にやっていますね。私のお芝居を見に来てくれて、感想を言ってくれることも多いです。

シングルマザーから、再婚、そして離婚。いろいろありましたけど、変わらないことと言えば、どんなときでもずっと、変わらない愛情を注いできたこと。QUEENの『too much love will kill you』がどこかで掛かるたびに、息子から「母さんのテーマソングだよ」といじられるくらい(笑)。

反抗期があったときは、寂しさよりそれを面白がるほうが強かったな。私も若かったころ、親のことを疎ましく思っていた時期があって。あのときの親がこんな気持ちだったんだと知ると、また新鮮な気持ちで家族に接することができたり。人生ってそうやって、繰り返していくものなんですよね」

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息子さんに「愛情がtoo muchと言われる」と話す南果歩さん。息子さん夫婦と仲の良い関係が窺えます。


絵本を通して「心の拠り所」をみつけてほしい


「リモートで『一生ぶんの だっこ』を読み聞かせするたび、たくさんの人から「絵本にしてほしい」と言っていただいて。初めての絵本を出版することになりました。

イラストを描いてくださったダンクウェルさんは、現代アーティストとして活動されています。もともと彼の絵が大好きだったので、イラストをお願いしました。目にはみえない親子の気持ちや雰囲気を、躍動感のあるイラストで表現してくださいました。

母さんぐまが子ぐまに繰り返す『一生ぶんの だっこ』は、独り立ちしたときの支えとなるようなもの。心の支えのある人って、たくさん冒険できると思うから。私自身、絶対的な味方でいてくれる家族の存在は、心の拠り所となっています。

この絵本を大切な人に読んで、お互いをぐっと身近に感じてほしい。安心できる関係は、親子に限らず、友人や、パートナーでも。この物語が、心の支えを見つけられるきっかけになったら幸せです」

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南果歩さんは、自身が執筆した絵本を「スキンシップの道具にしてほしい」と話します。

 

 


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『一生ぶんの だっこ』
文/南 果歩 絵/ダンクウェル

<ねえ ねえ かあさん。
一生ぶんの だっこって どのくらい?>

2011年東日本大震災以降、東北、熊本など被災地に向けての絵本の読み聞かせを続けている南 果歩。
本書は、コロナ禍でのリモート朗読が話題になった詩を絵本にしたものです。

読んでもらう子どもたちはもちろん、
読み聞かせする大人もいやされてほしいという気持ちがこもった、
やさしく包み込むような詩に
世界で活躍する話題のアーティスト、ダンクウェルがカラフルで躍動感のある絵をつけました。
何度でも読み返したい、新しい癒やしの絵本です。

*読んであげるなら3才くらいから *こどもから大人まで


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カメラマン/野口貴司
スタイリスト/坂本久仁子
ヘアメイク/国府田圭
取材・文/山口真央