オジサンふたりで酒を飲むってこんなに楽しかったのかなって。まるで二人芝居のような会話劇にも注目を


――今回は新しい時代劇でもあり、新しい梅安、新しい彦次郎ということで、そのおふたりの新しい関係性、新しい見どころを教えてください。監督の指示ではなく、おふたりのなかでアドリブのような形で湧き上がってきた関係などがありましたら、ぜひ教えてください。

豊川:今回の梅安と彦次郎の関係が、一番池波先生の原作に近いんじゃないかと思います。もちろんエンターテインメントでアクションもありますし、いろんな仕掛けの技といいますか、ケレンもありますが、二作の映画の半分以上を占めているのが“会話”です。ほぼツーショットで、いわゆる会話劇として、言葉を聞かせていく、言葉の方からキャラクターの心情をのぞかせていく感じです。

 

そういったツーショットのシーンでは、オジサンふたりで酒を飲むってこんなに楽しかったのかなと思いました。もちろん撮影中にお酒を飲むことはないのですが、まさしくそれを再現しているシーンばかりで……。その中で梅安と彦次郎は大事なことを話したり、ふと自分の身の上を話したり。そういう時間は、ちょっと話は違いますが、テレビやラジオやインターネットがない時代は、本当に相手しかいなかったわけですから、私は経験したことがないけれど、楽しかったのではないかなと思います。

撮影の終盤では、愛之助さんがいないシーンが続くと「早く会いたいな」という気持ちになったり(笑)。今回オファーをいただいて、「彦次郎役のイメージはありますか」と聞かれたときに最初に思い浮かんだのが愛之助さんだったので、それが実現したことが私にとっては本当に嬉しいことでしたから。

 

愛之助:コロナ禍ということで、普段なら終わってから一緒にご飯を食べに行ったり飲みに行ったりするのにまったくできなかった。だから撮影しながら、飲んでいるのはお水とかなんですが、オジサンふたりで十分に楽しかったです。

「彦次郎を私に、とおっしゃっていただいたというのは本当ですか?」と豊川さんにお聞きしました。だってこんなに嬉しいことはないじゃないですか。その期待にお応えするためにこの作品に全力で挑みました。普段は歌舞伎に出演しながらドラマや映画の撮影に臨むのですが、3ヵ月間一つの作品にのめり込めたというのは初めてだったと思います。だからすごく嬉しかったです。幸せなひとときでございました。

前編はここまで。おふたりが楽しみながら作品に携わられたのが伝わる会見となりました。後編では撮影での苦労話や他の共演者の方々とのエピソードなど、なかなか聞くことのできない珍しいお話が満載です。

『仕掛人・藤枝梅安』
2月3日公開

『仕掛人・藤枝梅安2』
4月7日公開

 
原作:池波正太郎『仕掛人・藤枝梅安』(講談社文庫刊)
豊川悦司 片岡愛之助 菅野美穂 小野了 高畑淳子 小林薫

第一作ゲスト:早乙女太一 柳葉敏郎 天海祐希
第二作ゲスト:一ノ瀬楓 椎名桔平 佐藤浩市
監督:河毛俊作 脚本:大森寿美男 音楽:川井憲次


撮影/市谷明恵
取材・文/前田美保
構成/坂口彩