劇場離れに一石を投じられる、リアルで新しい時代劇とは


――おふたりにお伺いしたいのですが、今回、『時代劇、新時代。』ということで、幅広い年代に観ていただきたいという愛之助さんのお話もありました。20、30代の若い方、または時代劇になじみのない方がこの作品に接してどのような魅力があると感じられるか、おふたりがどのようなことを届けたいと思われているかをお聞かせください。

ⓒ「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

豊川悦司さん(以下、豊川):私の印象ですが20代や30代の方には“劇場離れ”があると思うんです。自宅や端末ツールですぐに見たいものが見られるという時代になってきているので、不特定多数がいる中に入っていって同じ映像体験を共有するというのが少なくなっている気がします。そういう人たちにとってこの映画は、ひとつのきっかけになるような、みんなと一緒にひとつのものを同じ時間軸の中で同じ場所で観ることって面白いんだなって思わせる映画だと思います。

音楽も素晴らしいですし、映画の全体的なトーンも『シン・時代劇』という呼び方にふさわしい、今までの時代劇にはなかった部分だと思います。“ギリシャ悲劇”といったらいいすぎかもしれませんが、そういう古典がもっている作品の影みたいなものがとてもわかりやすく現代風に描かれているんです。映画館から少し足が遠のいている若い世代の方にぜひ観てほしいと思います。

 

片岡愛之助さん(以下、愛之助):河毛監督がおっしゃる「新しい時代劇」とはどういうものなのだろうと思っていました。出来上がった作品を観て、まず音楽や効果音の使い方が斬新で驚きました。これが「新しい時代劇」かと。従来の時代劇の良い部分に、新しいエッセンスが組み合わさっているのですが、まったく無理がないんです。そういう意味でも自然に入っていけると思います。

あとは、とても“リアル”だと思いました。特に明るさ。とても暗い環境で撮影を行いました。現場で映像を見ていて暗い印象を受けていたんですけど、完成した作品を映画館で観たときに、その時代にタイムスリップしたかのようなリアルさをすごく感じました。そういったところも楽しんで観ていただけるんじゃないかと思いますね。

歌舞伎もそうなんですが、ちょんまげをつけて時代劇というと、「古い」と思われてしまいがちのようです。でも、この「藤枝梅安」という映画は本当に楽しいエンターテインメント作品になっているのが分かっていただけるかと。現代にも共通する、人間の心の芯に触れる部分もありますからそういう意味でも本当に若い方にも満足していただけるんじゃないかなと思います。