内閣府が発表した「令和4年版高齢社会白書」によると、日本人の健康寿命は男性72.68年、女性75.38年で、誰かの手を借りながら生活する期間は平均して男性8.73年、女性12.07年となっています。ここには当然寝たきりの状態も含まれており、寝たきりは介護度で言うと最大の要介護5。現在、約60万人の方が認定されています。今回の相談者・美奈代さんも、コロナ禍で会えていない父親が寝たきりになったらどうしようと一抹の不安を抱えている様子。そこで今回は、美奈代さんと一緒に「寝たきりはなぜ起こるのか」を考えてみましょう。

 


妻を亡くした夫が行き着く先は寝たきり!?


先日会社の先輩と話していた時のこと。九州に住むお義父さんが、お義母さんを亡くして以来生きる気力をなくしてしまったようで、ここ数年家にこもりきりだと言います。足腰もすっかり弱り、先輩は「このまま寝たきりになったらどうしよう……」と悩んでいました。

先輩のお義父さんは80代。私の父も80代で、同じ一人暮らし。他人事とは思えません。父も母を亡くしてから出歩くことが減り、今は要支援2の認定を受けています。まだまだ人の手を借りずに歩くことはできますが、いつ助けが必要な状態になってもおかしくありません。実家は沼津で、私の住む茅ヶ崎からは東海道線で1時間強。通えない距離ではありませんが、それでもやっぱり寝たきりは避けたいところです。それより何より、ひとり寂しく寝たきりで過ごす父の姿を想像するだけで、胸がギュッと締め付けられます。

元気な今のうちから、子どもの私がサポートしてあげられることはあるのでしょうか。

欧米に寝たきり老人はいない


「欧米に寝たきり老人はいない」という話を聞いたことはありませんか? 高齢者の寝たきり率を国別に比較すると、日本を100とした場合、アメリカやデンマーク、スウェーデンは20以下と、諸外国の比率は著しく低くなっています。

その理由は2つあります。1つ目は、延命治療は非論理的で、老人虐待だと国民が認識している点。たとえ食べることができなくなったとしても、欧米では胃ろうや点滴などの人工栄養で延命しないため、寝たきりになる前に亡くなってしまいます。

2つ目は、働き、動く生活をし続けていること。北欧の高齢者施設では、朝になると職員が入居者を起こして外出を促し、部屋に鍵をかけてしまいます。入居者は好きな時間に部屋に戻ることができないので、その間散歩や仕事をして動きます。そこで脳が活性化され、足腰も鍛えられるため、健康寿命が長くなるというわけです。
 

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寝たきり予防の参考にしたい高齢者施設のあれこれ
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