運転免許を取ろうと思ったら、自宅から近い教習所に通う通学型か、ホテルなどに滞在して教習所に通う合宿型の2つに大別されます。通学型は自分のペースで通えるものの、教習所に通う期間が長くなったり、時期によっては予約が取りにくかったりすることもあります。一方の合宿型は、約2週間ホテルなどに泊まって短期集中でカリキュラムをこなすため、免許取得までの期間が短く、費用も通学型より安くなることが多いと言われています。どちらを選ぶかはその人次第ではありますが、免許取得までにはさまざまなドラマが生まれるもの。『39歳の免許合宿〜ストーリーは自分(てめぇ)で創れ〜』(ワニブックス)は、お笑いトリオ「グランジ」の五明拓弥さんと、「group_inou」のミュージシャンimaiさんが二人で免許合宿に参加した時の体験をベースにしたストーリー。“胸熱すぎる!”と注目を集めています。


コロナで時間ができ、免許合宿へ。


ことの発端は、五明(ごめい)拓弥さんとimaiさんが、マンガ家の山本さほさんと3人でご飯を食べていた時のこと。ともに39歳の五明さんとimaiさんが運転免許を持っていない、という話になりました。山本さんは通学型で運転免許を取っていたものの、人生で後悔していることの一つに、「免許合宿に行かなかったこと」がありました。合宿型だと友達同士で行ったり、行った先で友達ができたりと楽しそうなことが多く、山本さんは軽い気持ちで、「2人で免許合宿とかどうですか?」と勧めます。

 

ちょうど新型コロナウイルスの影響で仕事が落ち着いていた時期ということもあり、トントン拍子に話が進み、本当に二人で免許合宿に行くことを決めてしまいました。それがとんでもないドラマの始まりになるとも知らずに――。

 

2021年6月、緊張の面持ちで、とある地方都市の教習所にやってきた二人。入校手続きをしたら、もう腹をくくるしかありません。

 

自ら望んで入ったとはいえ、基本的にはホテルと教習所の往復で逃げ場なし。毎日、学科と教習のカリキュラムをこなしていくことになります。しかし、40歳目前になった男二人を待ち構えていたのは、クセの強すぎる教官や、年齢やバックグラウンドがバラバラの教習生たち。そういえば遠い昔、学校に入学する時、「どんな先生がいるんだろう? 友達できるだろうか?」と緊張したものですが、まさかアラフォーになって、そんな気分を味わうことになるとは……。
 

 

クセ強教官との、攻防の日々。


しかも免許取得が目的なので、教官たちの指導は甘くはありません。いい歳して怒られることも日常茶飯事。地味に心を削られていく様子がリアルに描かれています。人生で初めて運転するのだから、なかなかうまくできるものではなく、失敗の連続。それでも毎日ホテルに送迎車が来て、教習所に通わなくてはなりません。なぜならそれが免許合宿だから。

 

それにしても、このお二人の引きが強いというかなんというか、ものすごくキャラの濃い教官揃いで、ネタは尽きません。教官と対峙する二人にとっては真剣そのものですが、読む側からすれば笑いの連続。教習所では唯一の楽しみであるはずの昼食として支給される弁当の話や、近隣の飲食店で食べる夕飯のひとときも丁寧に描かれています。

本書はDAY1からDAY19まであり、これは二人が教習所をすごした全19日間の記録ということ。五明さんは、imaiさんと過ごした強烈な日々を何かに残しておきたくて、iPadで見よう見まねでマンガを描きました。ツイッターで発表するうちに反響が大きくなり、自費出版したものを同人誌即売会「コミティア」で販売したところ、見事に完売。あれよあれよと今回の商業出版につながっていったのです。
 

これは、中年のための青春のバイブルだ!


それにしても、免許合宿にこんなにもドラマがあり、ラストにも感動できるとは! いい歳をした大人だからこその悲哀があり、青春がある! 五明さんの独特のタッチが、シュールな笑いへと見事に昇華させています。そして、教習所に通ったことがある人なら「あるある!」の連続で、誰もが苦労して乗り越えてきた道のりがリアルに思い返されて、なんとも言えない気持ちにさせられます。そういえば私も、「ちゃんと運転できていたけど、まだ車幅感覚をつかめ切れていないから、今回は不合格ね」と教官に言われた時、「ふざけるな〜!」と思ったけども、教官が厳しい指導をするのは、車を運転することが人の命に関わることだから。本書に出てくる鬼教官たちも、単に意地悪でそうしているわけではないはず(たぶん)。

本書のサブタイトルである、「〜ストーリーは自分(てめぇ)で創れ〜」は、五明さんが教官の一人に実際に言われた名言。たかが免許、されど免許、教習所は人生の生き様も教えてくれるのでした。免許取得の有無関係なしに、「もう年だから」と諦めがちな世代にこそ読んでほしい、中年にとっての青春のバイブルです!

 

©ごめたん/ WANIBOOKS

 

 

【漫画】『39歳の免許合宿〜ストーリーは自分(てめぇ)で創れ〜』
第1話を試し読み!

▼横にスワイプしてください▼

『39歳の免許合宿〜ストーリーは自分(てめぇ)で創れ〜』
ごめたん ワニブックス

それは、とある居酒屋から始まった――。
漫画家・山本さほから放たれた一言によって「免許合宿」に行くことになった、39歳にして運転免許を持っていない二人。
お笑い芸人・五明拓弥と友人のアーティストimai(group_inou)。

静岡の激うまハンバーグを食べに行くことを目標に、自動車免許を2週間で取得するための免許合宿へと向かうのだが…。

免許を取った人、これから免許を取りたい人、免許を取らなかった人――。
すべてのオトナたちに「青春」をリフレインしてもらうため、今いちばん読んで欲しい一冊!


作家プロフィール
ごめたん(五明拓弥)

1981年8月24日生まれ、千葉県出身。
血液型B型、身長190cm、趣味は蒙古タンメン中本。
NSC東京校 6期生、2005年結成のお笑いトリオ「グランジ」のボケを担当。
ラジオパーソナリティとしても活動中。