お味噌汁、と聞いてイメージしたのはどんな味噌汁でしょうか。豆腐とわかめ、ねぎ、なめこ、具材は何が入っていますか? 赤味噌・白味噌・麦味噌など、どんなお味噌を使いますか?
地域や家庭によってさまざまなバリエーションがあるお味噌汁。中には、自分の想像を超えるびっくりな組み合わせがあるはず。ご飯、と聞くと、だいたい白米をイメージするのに、この差はおもしろいと思いませんか? お味噌汁には多様性があるのです。

『29時の朝ごはん〜味噌汁屋あさげ〜』は、"欲望の街"新宿・歌舞伎町で、朝だけ開いている定食屋「あさげ」が舞台。周りとは場違いなほっこりした雰囲気のお店に訪れる人々のドラマを、お味噌汁とともに描きます。

「あさげ」は、夜の街・歌舞伎町にありながら朝の5時=29時から3時間だけ開き、メニューは日替わりのお味噌汁とおにぎり、のみの定食屋です。

歌舞伎町の人々をあったか味噌汁が癒す...朝だけ開く定食屋の人間ドラマ『29時の朝ごはん~味噌汁屋あさげ~』_img1

 

最初のお客様は、新人ホストとその女性客。
「どこかでゆっくり休まない?」と女性客に言われ、沸き立つ心。すると、どこからかご飯のいい匂いがしてきて、見つけたのは一件のお店。

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それが、雀荘の入っているビルの一階にある「あさげ」でした。

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思わず入店すると、店内には歌舞伎町とはミスマッチな雰囲気の店主と店員。この二人は姉妹のようでした。

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メニューを見ると「味噌汁(日替わり)600円」しか出ていません。
「当店は、日替わりの味噌汁とおにぎりをお出ししています」店員にそう説明されると、ホスト君は、
「そういう地味で野暮ったいのはいいからさ」と、断り、決めゼリフを言います。

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「自分をイメージした朝飯を作ってほしい」という、急で無茶ぶりな注文を、手際よく作りはじめる店主。その様子を見ながら、

なんで汁物しか出さねーんだろ

と不思議に思うホスト君。「朝食はいつも何を食べるの?」と連れの女性客に聞かれると、「基本はサンドイッチとコーヒーだけど、リゾットの時もあるな」と洋食をアピールします。

 

でも、カウンターから出てきたのは、

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焼き魚と目玉焼きのついた和定食。
なんでホストに和定食なんだよ、さっき「リゾットの時もある」って言っただろ? とイラッとしつつも、空腹に耐えきれず食べ出します。

彼が和定食を嫌うのは、実家を思い出すからでした。

実家でよく食べたこの味
別に嫌いじゃねーけど

体の中まで田舎に染まりそうで しんどいんだよ

彼は田舎が嫌で、一番派手な街、歌舞伎町に逃げてきたのでした。焼き魚の美味しさにちょっと心を揺さぶられながら、「俺はもう田舎は捨てたんだ」と、振り切るように味噌汁をぐいっと飲むと、その美味しさに驚くホスト君。

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この味噌汁はすごく美味しい。でも、「あれ」がなくちゃ⋯⋯。なにか物足りなさを感じる彼が、次にした行動とは? 是非試し読みで読んでみてくださいね。


⋯⋯一悶着あった後、「あさげ」の店主は、こう言います。

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ここは 夜を明かした人が 肩の力を抜くためのお店です

「あさげ」は訪れたお客たちの、歌舞伎町で飾り立てた姿ではなく、素の姿をあらわしたお味噌汁を出すお店でした。
ちなみに、ホストの彼が食べたお味噌汁は、ある地域の郷土料理でした。さてどの地域だったでしょうか? 答えは試し読みで確かめてみてくださいね。

二話以降、店主姉妹は「あさげ」に訪れるお客に、その人に合うさまざまなお味噌汁を出します。中でも驚いたのは、イカ墨の真っ黒なお味噌汁。

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イカ墨汁といって沖縄でよく飲まれるのだそうです。出された真っ黒なお味噌汁に最初はぎょっとしていたお客も、飲むと「見た目はハードだけど美味い」と評していました。

組み合わせが無限にあるお味噌汁の世界。店主は言います。

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いろいろ試して 香りや味の違いを発見するのが
お味噌汁の醍醐味だと思います

「こんな組み合わせ、ありえない」「これとこれを合わせたらおかしいんじゃないか?」と否定せず、試し、違いを発見しても、どんなお味噌汁も等しく心をあたためてくれると知る。これって多様性を認めること、そのものじゃないでしょうか。世界に出なくても、お味噌汁を作れば多様性を感じることができるのです。

さて、和食は、ユネスコ無形文化遺産に登録されているのを知っていますか。
その理由の一つとして、多様で新鮮な食材と、その持ち味を尊重する調理技術や道具が発達していることがあるそうです。
実は、和食には、他の国ではあまり食べられていない食材が結構あるのだとか。単一民族で多様性がない、と言われてきた日本ですが、食のシーンでは、昔から多様性が存在していたのではないでしょうか。

お味噌汁のような、汁物は特に、まだこの日本ならではの多様性が残っているのではないかな、と思います。お雑煮も地域によってかなり違いがありますよね。

本作では、歌舞伎町で日々繰り広げられる人間ドラマの中に、個性あふれるお味噌汁がたくさん登場します。レシピも一緒に載っているので、気になったものをすぐ作ることもできますよ。これまで知らなかったお味噌汁の多様性の扉、開いてみませんか?

 


【漫画】『29時の朝ごはん〜味噌汁屋あさげ〜』第1話を試し読み!
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『29時の朝ごはん〜味噌汁屋あさげ〜』
佐倉 イサミ (著)
KADOKAWA

歌舞伎町の片隅で朝の5時に開店する小さな定食屋「あさげ」。切り盛りするのは若い姉妹、メニューは一品だけの一風変わったこの店には、夜の街のワケアリな人間が毎朝ふらりと訪れ、今日も小さなドラマが始まる! 



作者プロフィール

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佐倉 イサミ
『もふっとキャンプ』をcakes(ケイクス)で、『29時の朝ごはん』をコミックブリッジ(KADOKAWA)で連載中。他著作物に『農業男子とマドモアゼル』、『春風ふるさと観光協会』(KADOKAWA)『まんがでわかるブロックチェーンのとりせつ』(小学館)『おかわり自転車』(芳文社)『またたび古書店』(少年画報社)などがある。
Twitterアカウント:@sakura_isami
Instagramアカウント:@sakura_isami

 

構成/大槻由実子