「人生は住む場所で変わる」を実感した経験はありませんか。住む土地は、私たちのパーソナリティにひと味加える一滴のエッセンスのようなもの。日本からNYに赴任し、ニューヨーカーたちとの出逢いで感じたことを描いたインスタグラムでのエッセイコミックが評判を呼び、ついにはコスモポリタン日本版の連載になった『ニューヨークのヤマモトさん』。読むうちに自分もニューヨークの片隅で暮らしている気分に浸れるのです。

 


スーパーの店員として働くヤマモトさん


NYで働いていると言っても多くの人が想像するキラキラオフィスワーカーとはちょっと違うかも。ヤマモトさんが働くのは日系スーパーです。お客さんのクレームに謝ったり米袋を運んだり、

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もやしを大袋から小袋に詰め替えたり、ずっしりとしたゴミ袋を運んだり。でも一番は、スーパーに来るお客さんとの些細な交流。映画みたいなスタイリッシュなキラキラ感じゃないけれど、みんな人間味があって少しのやり取りでも、え、この人どういう人なんだろう? と興味をそそられます。

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逆に、黒髪・小綺麗・清楚な服で日本人らしい見た目の女性に日本語で接客したら「What did you say?」と言われたパターンも。

「NY以前」のヤマモトさんは自己肯定感低め


第二章「私の心とニューヨーク」では、日本で生まれ育ったヤマモトさんの「NY以前」の人生が語られます。かつての彼女はオールオアナッシングな思考で、何かネガティブなことがあると「もうダメだ」と心がぽっきり折れていました。
26歳で大失恋した後、彼女の中には希死念慮が湧き上がり、フェスやイベントなどいろんなアクティビティを試してみたけれども、死にたいという気持ちは消えなかったのです。

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自分が何者で何をしたいのかわからなくなっていたそんな時。NYへの赴任の話が舞い込んできたのです。その大きな街は自分を受け入れてくれても自分を変えてはくれないだろうと期待せずに行ったNYでは、年齢・性別・国籍・肌の色がバラバラな同僚たち、そして、逆境にめげず明るく生きる女性たちとの出逢いがありました。

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日本にいた頃は自分がどれだけ辛くてかわいそうかを知り合いに語っていたヤマモトさんは、彼らを見て己の未熟さを感じたのでした。

銀行や電車で感じる「NYらしさ」


街中でヤマモトさんが感じる、日本と違うNYらしさとは。電車内でモコモコのファーを着た人と半袖のTシャツを着た人が共存している瞬間や、銀行でのこんな接客スタイルで感じられます。

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ゆるっゆるな銀行員の様子はなかなかのカルチャーショック。「銀行員らしさ」や、公私で自分のキャラを変えるという概念が存在してないのかも!?

そして、コロナのパンデミックが起きて4ヶ月経った頃、電車におぼつかない足取りのおじいちゃんが乗ってきて、転んだ瞬間のこと。

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脳内で考えがめぐり手を差し伸べられなかったヤマモトさんは、コロナ禍でも見ず知らずの人に迷いなく駆け寄るニューヨーカーの姿に久しぶりに生きている実感を覚えたのでした。

ヤマモトさんが愛してやまないカフェを経営する夫婦「アラとエンリコ」シリーズにもニューヨーカーの人情というものを感じます。でも「NYの銀行員」のコメントで「中間くらいがあったらいいのにな」と書いているように「海外アゲ、日本サゲ」はしていない。そこがいい。あと、アメリカのカートゥーンっぽいポップな絵柄と、自己肯定感低めで負の感情を隠さずに見せる作風のバランスも絶妙なんです。

いつか漫画家になりたい、という幼い頃の夢を叶えたヤマモトさんは、コスモポリタン日本版での連載を現在も続けています。彼女の人生が変わってゆく過程を本作で味わってみてくださいね。

 

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『ニューヨークのヤマモトさん』
ヤマモト レミ (著)

恋にやぶれ、自分に疲れ、どん底だったある日、ニューヨークへの転勤が決定!
エネルギーに満ちた街で日系スーパーの店員として働くことに。運命を嘆かず、逆境に負けない女性たちに刺激をうけ、とびきり自由でちょっとクレイジーなニューヨーカーたちと出会ったことで、落ち込み投げやりだった気持ちが少しずつ上向いていく。何かを始めるのに遅いことはない、そう背中を押してくれる1冊です。

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ヤマモト レミ
2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主に。
Instagramアカウント: @yamamotoinnyc


(C)ヤマモトレミ/KADOKAWA
構成/大槻由実子
編集/坂口彩

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