子どもを育てていると、自分よりも子ども中心の毎日。子どもが小さい頃はさらに手がかかりっきりで、自分のことは二の次になりがちではないでしょうか? そして、いつかは子どもも大きくなり、巣立っていく日が来ます。 “子育て戦線”を離脱することになった女性は、その先どうなっていくのでしょうか? もしもそんな時に、素敵な人が現れてしまったら? BE・LOVEで連載中の『海自とおかん』は女手一つで必死に1男1女を育ててきたシングルマザーの、アフター“子育て戦線”物語。これがまた、すごくキュンキュンさせられて、応援したくなるラブコメディなのです。


ある日突然、“子育て戦線”を離脱?


金剛麻美(こんごうあさみ)は広島県呉市在住で、現在35歳のバツイチ・シングルマザー。壮絶な“子育て戦線”をかいくぐって1男1女を育て上げ、この日は高校3年生の息子・ライムの卒業式。でも、朝から水道管の水漏れのせいで卒業式には間に合いませんでした。卒業式での息子の晴れ姿を見逃してしまい、お祝いに美味しいものを食べに行こうと息子を誘うも、「これからみんなで打ち上げ」と、友達を優先するライム。さらには、大学進学を機に、今の家よりも大学に近い祖父母の家に引っ越して通うことに決めた、と事後報告されてしまいます。

バツイチシングルマザー、イケメン海上自衛隊員から告白される。でも彼は娘の同級生だったと気づき...!『海自とおかん』_img1
 

親よりも友達優先で、家も出てしまうという息子から、追い打ちをかけるように「子離れしよ?」と言われる麻美。失意のまま帰宅すると、26歳の娘・リカが友達と沖縄旅行に出かけるところでした。子どもの成長はうれしいけど、振り返りもせずに巣立っていくのは寂しいもの。麻美の心はもぬけの殻状態。シングルマザーになってから16年、子どもたちを食べさせていくために、仕事と子育てに全振りしてきただけに、一人になって自分には何もないことに気付かされます。

そんなことを考えながら、会社の昼休みに海辺でぼーっとしているところ、偶然、海上自衛隊員の結婚式に遭遇します。眩しいばかりの白い制服に見とれる麻美。するとそこに突風が吹き、参列していた隊員の一人の帽子が飛ばされてしまいます。

バツイチシングルマザー、イケメン海上自衛隊員から告白される。でも彼は娘の同級生だったと気づき...!『海自とおかん』_img2
 

あわてて帽子をキャッチした麻美は、持ち主の男性に帽子を返すのですが、純白の制服に身を包んだあまりのイケメンっぷりに鼻血をたらしてしまいます。心配した彼は横に付き添ってくれることに。でも、この騒動の間に麻美が食べようとしていたパンは海鳥に食べられてしまい、お昼を食べそこねてしまいます。

そんな麻美を見た彼は、「帽子のお礼です」と、結婚式の二次会に誘ってくれたのです。仕事と子育てに邁進してきた麻美は、「たまにはいいんじゃない? こんなイレギュラーも」と自分に言い聞かせ、会社に早退の連絡を入れて、お言葉に甘えて二次会に参加することに。

 
 

16年ぶりにときめいた相手が、まさかの!


男性は小笠原(おがさわら)という名前で、海上自衛隊幹部の若きエリート。麻美も「金剛麻美です」と名乗ると、なぜかテンションが上がる小笠原。実は「金剛」は、旧海軍の戦艦と同じ名前で、小笠原が大好きな戦艦だったのです。近くにいた他の海自隊員たちも、「金剛」という名前を聞いて大盛り上がり。そんな時に、会場で具合が悪そうにフラフラする隊員を見かけた麻美は、彼が吐きそうなのを察して、自分のスカートをまくりあげ、「ここに吐いて!!」と叫びます。

バツイチシングルマザー、イケメン海上自衛隊員から告白される。でも彼は娘の同級生だったと気づき...!『海自とおかん』_img4
 

小笠原は服が汚れてしまった麻美のためにホテルの一室を取り、服をクリーニングに出してくれた上に、「お礼に」と、着替えのワンピースまで用意してくれました。麻美のとっさの判断と行動力によって、会場や新郎新婦に迷惑をかけることなく場を収めたことから、「さすが金剛」と褒められ、うれしくなる麻美。クリーニングに出した服が戻ってくるまで、新郎新婦から差し入れられたワインや会場の料理を食べながら二人で待つことに。そして、麻美は会ったばかり小笠原にどんどん心惹かれていくことに気づきます。お酒も入っていい雰囲気になり、まだ聞いていなかった小笠原の下の名前を聞くと、「大和」とのこと。「小笠原大和」ってどこかで聞き覚えがある……、と記憶を手繰り寄せると、それが娘・リカの同級生であることに気づいてしまうのです。ちょっといいなと思った男性が、まさかの娘と同い年!!

バツイチシングルマザー、イケメン海上自衛隊員から告白される。でも彼は娘の同級生だったと気づき...!『海自とおかん』_img5
 


“おかん”にならざるを得なかった女性の恋の行方は?


麻美が現在35歳で、娘のリカと、同級生の小笠原が26歳っておかしくない? とお気づきの方もいるかもしれません。実はリカは元夫の連れ子でした。その後、元夫との間にライムが生まれたものの、夫の不倫であえなく離婚。その後、麻美は血のつながらないリカと、まだ幼いライムを16年間必死に育ててきたのです。だからこそ、年齢は35歳とまだまだ若くても、メンタルは完全に“おかん”。何もかも自分でなんとかしなくてはならず、“おかん”になって、戦艦金剛のごとく突き進むしかなかったのです。

もちろん、その過程は辛いことばかりではなく、子どもたちの成長を喜び、家族3人の生活に幸せを感じてきました。そんなある日、子離れからの、制服が似合うイケメン海上自衛隊員との出会い。さらには、その彼がまさかの娘と同級生という驚愕の事実! 1話目から「ないない」と思うような怒涛の展開ではあるのですが、そこは、ドラマや映画、アニメにもなった『ピーチガール』シリーズや、大人の発達障害を抱える妻と、脳梗塞で倒れた夫の実話を描いた『されど愛しきお妻様』などを夜に送り出した上田美和先生の新作なだけあって、戦艦金剛のように、ぐいぐいと物語の世界に引き込んでいきます。

タイトルにもなっている“海自”についても、上田先生が作品の舞台になる呉市の各施設を訪れ、防衛庁の海上自衛隊広報にも取材したりした上で描いているだけあって、なかなかにリアルで説得力あり。

子どものために一生懸命生きてきた麻美だからこそ、新たな一歩を応援したくなるもの。また、麻美よりも一回り年下だけど、どこまでも真っすぐに自分の思いを伝える小笠原が眩しくてイケメンすぎる! 笑いあり、ドキドキあり、切なさあり、涙ありと、さまざまな感情を揺さぶられまくりのイチオシ作品です。12月13日に単行本1巻が出たばかりですが、一気読みして、「続きはどうなるの??」と悶絶すること間違いなしです。

 

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『海自とおかん』
上田美和 講談社

子育て、時にそれは戦場。PTAの赤紙に怯え、ママ友関連の地雷に目を凝らし、我が子の発熱に奔走する。数々の戦場を渡り歩いた熟練のおかん戦士・金剛麻美(こんごうあさみ)、35歳、一男一女のシングルマザー。子どもたちから「子離れ」を進言され、子育て戦線を離脱した麻美を待ち受けるのは、まさかの恋愛戦線で!?
バツ1シングルマザー×海上自衛隊男子、歳の差LOVE!

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