幼馴染同士の学園ラブコメといえば、少年マンガでは鉄板の設定です。似たような設定の作品はあまたあり、読み始めてみて「また?」と思う人も少なくないでしょう。でも、週刊少年マガジンで連載中の『赤羽骨子のボディガード』は、学園ラブコメといえばそうなのですが、そこにいくつもの予想の斜め上を行く設定やキャラクターが掛け合わさり、読み手を鷲掴みにするパワフルな作品です。「少年誌のマンガなんでしょ?」と思ってパスするのはもったいない面白さです!

『赤羽骨子のボディガード』(1) (週刊少年マガジンコミックス) 


喧嘩っ早いヤンキーと優等生女子のテンプレラブコメ?


現在、錚々児(そうそうじ)高校3年生で生徒会長の赤羽骨子(あかばねほねこ)は、ともに弁護士である両親に育てられた正義感の強い少女。将来の夢は、両親のような立派な弁護士になること。困っている人がいたら放っておくことができず、弱いものいじめや暴力なども見過ごせないタイプです。

 

彼女には同じ高校に通う、幼馴染の少年・威吹荒邦(いぶきあらくに)がいます。見た目はいかついヤンキーで、気が短くて喧嘩っ早いのが特徴。売られた喧嘩は買ってしまうことがよくあり、周囲からは恐れられています。でも、唯一、骨子だけは荒邦に踏み込んでいき、喧嘩をしようとしていたら止め、よくないことは正々堂々と諌めます。荒邦はそんな骨子をウザいと思いつつも、見た目や噂に惑わされずに真っすぐに関わってくれる彼女に対して、淡い恋心を抱いているようです(といっても、本人は認めたくはないようですが)。ここで既に、ガラは悪いけど実はいいヤツという少年と、正義感が強くて優等生なヒロインというお約束な設定が早速登場しています。

 

ある日の朝、荒邦はクラスメイトの寧(ねい)と一緒に登校する骨子を離れた場所から見守っていました。そこに、いかにも怪しげな人相の男が骨子の背後に忍び寄り、ナイフで襲いかかろうとします。荒邦はその男の足をひっかけて動きを封じ、制服のすそが汚れたと難癖をつけ、その男を骨子から引き離そうとします。

 

しかし、自分が狙われていたということに気づいていない骨子から見れば、チンピラ風情の荒邦が一般市民に絡んでいるようにしか見えません。「またアナタね 威吹君!!」と荒邦につっかかり、荒邦も「俺に絡んでくるんじゃねぇよ カタブツが!」と応酬。この幼馴染が反発しあう感じも、「あるある」な設定のひとつと言えるでしょう。

 


顔を合わせれば口喧嘩だけど、実はあいつのことが……。


隙をついてその場から逃げた男を追いかける荒邦。なぜか赤羽骨子は殺し屋に命を狙われていて、何人もの殺し屋が襲いかかるのですが、いつも未遂に終わっていました。そのため、「凄腕のボディガードがついている」と噂が立っているほどだったのです。逃げた男は、荒邦がそのボディガードではないかと疑います。こんなところでやられるわけにはいかない男は、荒邦に襲いかかろうとしますが、荒邦は男に、「俺、どう見えた!?」といきなり聞いてきます。

骨子に暗殺を悟らせないために、彼女に悪態を付きまくってごまかしたものの、ガラが悪すぎたのではないか? 引かれたのではないか? と、実は気が気ではなかったのです。殺し屋の男が思わず、「赤羽骨子が好きなのか…?」と聞いてしまうほど。荒邦は顔を真っ赤にしながら「んなワケねーだろ ボケがぁ!!!」と即座に反論しますが、いや絶対に好きだろ。これもラブコメものではお約束なやつです。

 

でも、そもそもどうして骨子が誰かから命を狙われていて、幼馴染の荒邦が本人に知られないように彼女を守り、狙われていること自体を気づかせないようにしているのでしょうか? 実はそれには深い理由がありました。

それは、3年生に進級する直前の春休み最終日のこと。荒邦が帰宅すると、家の前にどう見てもそのスジの人にしか見えない人たちが何人も立っていました。工務店を営む父・丈夫(たけお)が、「尽宮組(じんぐうぐみ)ってところで昔ヤクザやっててよ〜」とさらりとカミングアウトしつつ、荒邦に尽宮組組長の尽宮正人(まさひと)を紹介します。やたらと威圧感のあるシブい男性です。

 

「今日は頼みがあって来た」と話を切り出した正人は、一枚の写真を荒邦に差し出します。そこに写っていたのは骨子で、正人は「俺の“隠し子”だ」という驚くべき事実を告げます。赤ちゃんの頃に、弁護士夫婦のもとに里子に出したため、骨子本人もこのことを知りません。ところが、正人が組長の座を退くと決めたところ、跡目争いが勃発。その時にひた隠していた骨子の存在が明らかになってしまいます。組の有力者が、正人は骨子を跡継ぎにするのではないかと疑い、殺し屋を雇って骨子を殺そうとしはじめたのです。

正人の願いは、骨子には極道の世界のことは何ひとつ知らないままでカタギの世界で生きてほしいということ。でも、学生である骨子は隙だらけ。かといって自分の手の内にある組の人間は信用できない。だから、幼馴染の荒邦に骨子を守ってほしいと、土下座して願い出るのです。

 

荒邦の父は、何の訓練も受けていないただのチンピラである荒邦には無理だと意見しますが、当の荒邦は違いました。卒業までの1年間、骨子に知られることなく守り通し、彼女を無事卒業させると誓ったのです。粗野な幼馴染がヒロインを守る、という設定はありがちですが、ここに本人にバレないように、殺し屋から命を守り抜くという条件が加わると、少し話は違ってきます。実は、第1話の中盤以降の急展開で「そうきたか〜!」と度肝を抜かれることになります。ここでバラしてしまうとインパクトが半減してしまうので、ぜひ試し読みで確かめてみてほしい!


荒邦はプロとしての訓練を受けたことがないものの、喧嘩が強いのは事実。でも、上には上がいるもので、苦戦を強いられることもしばしば。荒邦にボディガードを依頼した尽宮組組長の正人もそこは織り込み済みで、実はすごいプランを仕込んでいます。

冒頭ではベタベタな王道学園ラブコメ? と思わせておきながら、斜め上の設定でアクションやサスペンスの要素が加わり、一気に先の見えない展開になっていきます。もちろんそこにはしっかりとラブもコメディも存在しているので、王道ならではの面白さもたっぷりと満喫できます。

特に見どころはアクションシーン! 臨場感たっぷりで、とにかくかっこいい! 赤羽骨子のボディガード公式ツイッター(@akabanehonekoWM)では、時々アクションシーンを含むアナログ原稿の写真がアップされているのですが、その迫力や画力に圧倒されるので、チェックする価値大!

魅力的で個性的なキャラクターも続々と登場し、めちゃくちゃ勢いのある作品です。「少年誌の学園ラブコメなんてね〜」とスルーしそうになっている人の肩をつかんで、「いいから読め!」と言いたくなります(なので、ここで紹介しているわけです!)。

 

【漫画】『赤羽骨子のボディガード』第1話を試し読み!
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『赤羽骨子のボディガード』
丹月正光 講談社

奴らの狙いはただひとつ、赤羽骨子を殺すこと――。錚々児高校3年4組・威吹荒邦はある日、クラスメイトで幼馴染の赤羽骨子が殺し屋から命を狙われていることを知る。そして彼に託された使命は、赤羽に知られることなく1年間守り抜き、無事に高校を卒業させること。こうして秘密のボディガード学園生活が始まった! しかし「3年4組」にはさらなる秘密があって……!? 新感覚コメディ学園アクション開幕!!