「夫といる自分が、好きじゃなかった」


「離婚したい、家から出ていって欲しいと夫に伝えた時、反論はもちろんですが、彼は本気と受け取っていなかったようです。たしかに子どもも3人もいるし、普通はあのくらいの状態では離婚までしないのかもしれませんが……。私はとっては、何よりも夫と愛のない生活を続けるのが辛かったんです」

取材の中で、たびたび「愛」という言葉を口にする茜さん。彼女は人生において、そこに愛があるかどうか、心の状態を何より重要視しているのだそうです。

「気づくと、夫と一緒にいる自分が好きでなくなっていました。夫婦関係が冷めてからはほとんどセックスレスにもなっていたし、夫から愛されない自分が可哀想だとも思いました。自分をそんな風に思い、尊厳が保てないくらいなら早めに手を打ちたい。だから離婚しようと決めました」

 

茜さんは離婚に反対する雅之さんを何度も説得し、夫婦はとうとう別居。

取材中、茜さんは雅之さんを悪く言うことはできるだけ避けるように「私にも原因があったから」という言い回しを何度も繰り返しており、フェアで自立した人柄が伝わります。ですが客観的に見れば、仕事も家事育児もせずにノイローゼを掲げて家に篭り続ける夫を養い続けるのは、物理的にもあまりに負担が大きかったと思います。

 

「離婚を提案したのは私ですが、でも実際、彼が出ていってからは想像以上に辛い日々でした。夫とは10年以上の付き合いで、子どもも3人も産んで……。その存在がいなくなって初めて、『ああ、思った以上に愛してたんだ』と気づいて酷く落ち込んだり。

家のことも基本は彼に任せていたので、どこに何があるか分からずに家事も最初は大変でした。末っ子はまだ2歳で、保育園から病気をもらってくることも多く、そうすると否応なしに仕事ができなくなり混乱もしました」

3人の子どもたちを1人で育てながら、会社経営。精神的にも肉体的にも相当過酷な状況だったのでしょう。その負担がたたり、なんとこの時茜さんは急激に体調を崩し、手術と入院を余儀なくされてしましました。

「基本的にはメンタルも強く体力もあるので多少のことではめげないのですが、この時ばかりは困って心が折れそうになりました。すぐに入院の必要があり、何より子どもたちの世話が問題となりましたが、別居中の夫にそれを伝えると『忙しいから手伝えない』と、あっさり断られたんです」